
厳寒の時季に現れ、“氷点下の宝石”を思わせるダイヤモンドダスト(細氷)。この氷の結晶によって光が反射・屈折して発生する「太陽柱(サンピラー)」は、寒さが厳しい信州でも、見ることが極めて難しい自然現象だ。2月15日午後、幸運にも美ケ原高原(松本市など)で出合い、日没まで約1時間にわたり撮影した。
高湿度で氷点下10度以下・快晴無風で出現の可能性
午後3時40分。美ケ原牧場・焼山(やけやま)付近の気温は、氷点下12・1度。湿度は80%を超えている。「もしかしたら…」の予感が脳裏を走る。ダイヤモンドダストに伴うサンピラーの撮影に挑み、今冬の5回目。焼山の霧氷の撮影を終え、思い出の丘方面へ移動しようとした矢先、構えた望遠レンズの先に一瞬、キラキラ輝く小さな光が…。ダイヤモンドダストだ!
太陽が正面に見える、見通しの良い位置へ急ぐ。松本市側の眼下に突然、まぶしく大きなサンピラーが現れた。霧氷に覆われた木々を入れて構図を決める。夕日が落ちるのは早い。レンゲツツジの群落で知られる袴腰山(1753メートル)を背景にしようと、思い出の丘付近へ急行する。黄金に輝く光の柱。壮麗な夕景に心が震え、大自然に感謝し思わず手を合わせた。
キラキラと煌(きら)めく黄金の光の粒が、静かに降り注いでいるのがはっきり見える。まるで天から贈られる宝石のようだ。神の使いが舞い降りるかのような光景は、「天使のささやき」という美しい言葉でも表現される。
ダイヤモンドダストは、大気中の水蒸気が凍ってできた、小さな氷の結晶。日が当たるとサンピラーが現われ、光線の角度で黄金や虹色に輝くことも。気象上は降水現象の一つに分類され、青空から氷の結晶が降り注ぐ不思議な光景も、記録上は雪になる。
冬景色の中で一度は撮ってみたいのが、ダイヤモンドダストのサンピラー。この現象が現れるのは、太陽高度が低い位置にある、日の出後と日の入り前だ。
発生条件は、氷点下10度以下で快晴無風。最も重要なのは、湿度が高いこと。全ての条件がそろった上で、タイミングが合わないと出現しない。観望できる確率は、オーロラ以下とされる。

冬撮ってみたい一枚コツをおさえ冷静に
撮影のポイントは、空気中を浮遊する氷の粒の煌めきをぼかして(玉ボケ)撮り、幻想的に表現すること。記者の撮影方法は(1)200ミリ以上の望遠レンズを使う(2)絞りは開放値に近く(F2・8~4・5)(3)背景には暗い場所を(4)ピント合わせはサンピラーまでの距離によっても異なるが、その前面や後方に合わせて撮ってみて、玉ボケができるかで判断する|。出現すると一瞬で消えてしまう被写体ではないので、落ち着いて撮影しよう。
(丸山祥司)