
旅館のエントランスフロアが欧州風のホールに変身!?フランス菓子と音楽のセッションとは!?ユニークな二つのクラシックコンサートを、「アート・セッション・プロジェクト」(辻野恵(けい)代表)が企画している。安曇野、松本市などで、音楽や美術に関する活動をするグループだ。
一つは旅館「穂高温泉郷常念坊」(安曇野市穗高有明)が会場のコンサート「このひとふろ」。プロジェクトメンバーがエントランスにあったピアノを弾き、広がる響きに心を動かされて企画。5日に第2回が開かれる。
もう一つは4日、ラディーチェ鈴音(すずむし荘=松川村)で開かれる「ガトーエミュジック」。熟練の職人が作るフランス菓子を、若手演奏家の音楽で彩る試みという。
「座席」で違いも音の響き感じて
安曇野市の旅館「常念坊」。エントランスに置いてあったピアノを弾いた髙嶋真由美さん(49、安曇野市穗高有明)は、音の広がりに驚いた。ピアノは1968年のヤマハ製と古いが、「吹き抜けがあり、気持ちのいい音がする。ヨーロッパのホールのような響きがする。コンサートを開いたらすてき!」
「アート・セッション・プロジェクト」メンバーの真由美さんは、早速ピアニストの粟谷茂さん(47、同市穗高)と2人で、さらに同プロジェクト代表の辻野恵さん(同)、真由美さんの長男で武蔵野音楽大演奏学科ヴィルトゥオーゾコースでフルートを学ぶ髙嶋青海(おうみ)さん(23、東京都)を交えた4人でも訪れ、響きを確認した。コンサート開催を決め、昨年10月、入浴券をセットにした「このひとふろ」を開いた。
当日は30人を超す参加があり、急きょ席を増やすなど大盛況。演奏者と聴衆が近く、演奏者の息づかいや、客の反応を身近に感じられた。クラシックコンサートに初めて来たという女性は「こんなに感動するとは思わなかった。震えてきた」と興奮気味に話したという。音楽を身近に感じてもらい、愛好家の裾野を広げたいという狙いが成功した。
2回目となる今月5日は「リゾート」がテーマ。粟谷さん、青海さんが演奏する。親しまれた曲だけでなく、珍しい曲もプログラムに入れる。中でもムーケ作曲「パンの笛」は、楽譜が手に入りにくく演奏自体が珍しい。「音楽を気軽に楽しめる場面をつくり、本当にいいものを届けたい」と真由美さん。
演奏者を囲む、階段の踊り場、吹き抜けの2階部分|など、席はさまざまだ。当日は「ゴージャスな響き」(2階ピアノの真上)、「疲れない落ち着いた響き」(玄関付近)、「臨場感あふれる」(1階演奏者近く)といった解説が付いたユニークな座席表を配る。真由美さんは「座席は自由。響きの違いを感じてもらうのも面白いのでは」と話す。
熟練の職人の味大切な人と共に
松川村のラディーチェ鈴音を会場に4日、スイーツと音楽のコラボを目指す「ガトーエミュジック」。フランス菓子「ナカクニ」(安曇野市堀金烏川)のパティシエで、45年のキャリアを持つ中國康彦さん(73)と、安曇野市出身の20代音楽家の二人、高嶋青海さん(フルート)、井口花菜さん(同)のセッションとなる。食と音楽。アートのジャンルを、そして世代をも超えた共演が、どんな世界を生み出すか。菓子は、店にはあまり並ばないものを提供する予定という。
辻野さんは「大切な人とお菓子を食べる時間はすてき。ぜひ、体験して」とする。
日頃はあまり聴けない場所で、本格的なクラシック音楽を楽しめる。風呂もスイーツも魅力的だ。どんな化学反応が起こるだろうか。
【ガトーエミュジック】4日午後2時半、「ラディーチェ鈴音」(すずむし荘)。3600円(菓子3個、コーヒーか紅茶付き)。定員20人。予約はラディーチェ鈴音TEL0261・62・0223
【このひとふろ】5日午後3時、「穂高温泉郷常念坊」。2000円(入浴券付き)。中学生以下1000円。入浴券は当日以外でも使える。予約は常念坊TEL0263・83・4984