
スポーツは本来、健康な体づくりを助けるが、過度な運動により、かえって体を壊してしまうことがある。特に、成長期の女性の場合、運動量に対して食事量が足りないと、無月経などにつながってしまう。「しっかり食べることが高パフォーマンスや丈夫な体づくりにつながる」と力を込める公認スポーツ栄養士の沖本玲子さん(51、松本市高宮北)に話を聞いた。
エネルギー不足月経や骨に影響
小中学生の時は、体の土台をつくる大切な時期です。特に女子は、9歳頃から急速に女性らしい体になり、子どもが産める体をつくっていく。スポーツの技術向上も大事ですが、ジュニア期は発育や発達を優先させて練習することが重要です。
運動によるエネルギーの消費量に対して摂取量が不足した状態が続くと、女性ホルモンの分泌が抑えられてしまう。このことが女性の健康に大きな影響を及ぼします。
目に見えて現れるのが、初潮が来なかったり月経が止まったりする、いわゆる無月経です。体操や新体操など審美系競技、陸上の長距離種目など持久系競技、ジャンプ力を要するバレーボールなどの選手に多く見られます。
エネルギー不足だとけがをしやすくなるし、身長も伸びない。それだけではありません。女性ホルモンは骨も守ります。骨量のピークといわれる20歳までに十分な骨量を確保しておかないと、骨密度が低いまま、一生を過ごすことになってしまうのです。
「補食」取り入れ食べる楽しみを
「競技がうまくなりたい」から、激しい練習をたくさんする一方で、「痩せたい」「太りたくない」から食事量を抑える。この結果、体はエネルギー不足の状態が続き、命を守ろうとするため、「超省エネ体質」に変わります。
超省エネ体質は非常にやっかい。エネルギー不足の時、体は甘いものを欲します。ここで菓子やジュースを摂取すると、気持ちは満たされますが、これだけでは体は満たされず、ますます栄養不足になります。
また、超省エネ体質の体は、生命維持のため脂肪を蓄えようとするので、食べていないのに痩せない、ちょっと食べ過ぎただけで太る─という悪循環に陥る。思考力も集中力も落ち、選手は自分を責め、精神的にも追い込まれます。
むしろ、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど、さまざまな栄養素をバランス良く取ることで筋肉を付け、体の基礎代謝を上げる。こうした体は太りにくいので、ストレスを感じずに、好きなものを食べられる。この好循環を生むことが大事です。
良いトレーニングをし、それに見合った栄養を取る。月経があって、骨密度も高い、そうした“余力のある体”が高パフォーマンスを生む。「ジュニア期は食べることもトレーニング」なのです。
そのために「補食」を取り入れることもお勧めです。補食は▽練習中のエネルギー切れを防ぐ▽練習後の「ドカ食い」を抑える▽消化の負担を軽減する▽1日に必要な栄養を取りきる─などが目的です。
小食の子は分食で対応を。帰宅後、すぐにおにぎりと牛乳を、夕食で肉、野菜、果物を食べる─など。1品ずつ増やすのも効果的で、朝食にヨーグルトや果物を足してみる。野菜スープが飲めるなら、そこに卵を入れてみる─などです。
まずは食べることが楽しみで、幸せであることが基本です。