仲間と奏でる喜び―英国式金管バンド4年ぶり演奏会へ

金管楽器が奏でる温かなハーモニー。指揮者がテンポや音の強弱、表現の仕方を伝えるたび、曲が生まれ変わる―。
松本市を中心に活動する、英国式ブラスバンド「British Brass DOLCE(ブリティッシュ・ブラス・ドルチェ)」の練習風景だ。他のパートの演奏を「今のかっこいいね」と褒めたり、冗談を言い合ったりしては、笑顔を見せるメンバーたち。共に曲をつくり上げる経験を重ね、絆はより固くなる。
ドルチェは、今月26日に松本市音楽文化ホール(島内)で、30回目の定期演奏会を開く。新型コロナの影響で中止が続き、4年ぶりの定演開催となる。音楽や仲間と隔てられた時間を経て新たにした、演奏の喜び、支えてくれる人たちへの感謝を、音に込めて届ける。

心一つに日頃の感謝込め演奏

英国式ブラスバンドはコルネット、フリューゲルホルン、ユーフォニアムなど円すい形の金管楽器と、トロンボーン、打楽器で編成する、英国の伝統的な演奏スタイル。奏者はコの字形に配置され、楽器の「ベル」(アサガオの花に似た部分)が客席を向かないため、ステージ上でブレンドした音色が聴衆に届く。音色は「ドルチェ」の言葉通り「柔らかく」「甘美」だ。
ドルチェ創設者で団長の荒木信明さん(62、松本市大手3)が、英国式ブラスバンドに出合ったのは、吹奏楽部でユーフォニアムを担当していた中学時代。「ラジオから流れた演奏を聞き、体に電気が走った。いつか英国式ブラスバンドをつくりたいと思った」
1987(昭和62)年、荒木さんは、会社の同僚で高校の後輩の赤木正和さん(61、京都市)を誘い、ドルチェの前身となるデュオを結成。徐々にメンバーを集め、89年夏の「長野県吹奏楽連盟アンサンブルフェスティバル」で、10人のオリジナルメンバーにエキストラ(サポート)奏者を加えた28人で「British Brass DOLCE」として演奏。翌年2月には単独で第1回定期演奏会を開いた。以来、毎年3月の開催が定例化。2000年から7月に「サマーコンサート」も開いている。

メンバーは30~60代の28人で、大半が20年以上在籍し、「エキストラからそのまま居着いた人も多い」と荒木さんは笑う。英国式ブラスの定員30人弱を超えないようにし、顔ぶれは長年変わらない。
毎週土曜の夜、練習場所の松本市音楽文化ホールには、中信地域のほか長野市や諏訪市、京都からもメンバーが集う。20年以上指揮者を務める荒井弘太さん(58、東京都多摩市)も、指導日は松本に通う。「気持ちは音に乗る。全員が気持ちを合わせてこそ、音にエネルギーを込められる」。技術以上に心を大切にする。
「仕事や家庭もある。時には練習に来られなくても、誰一人欠けてはならない大切な存在。どの曲もみんなが思い合って演奏するから温かい音が生まれる」と荒木さん。

20年3月、メンバーの「日常」だったドルチェの活動が途切れた。コロナの影響で目前に控えた定期演奏会が中止となり、約1年半は全体練習も自粛。個々に練習しながら、再会の日を待った。
昨年7月、19年以来3年ぶりに音文ホールで「サマーコンサート」が復活。オープニング曲は「アズ・ザ・ディア」。ドルチェの演奏会で必ず最初に演奏する曲だ。入場者は半分以下に制限されたが、約300人の聴衆から送られた大拍手に、心が震えた。
今月26日の演奏会の曲目は、3年前のプログラムを引き継ぐ。難曲「エッセンス・オブ・タイム」と「エクスカリバー」に注目だ。「感謝を込めて演奏したい」

今夏を目標に、若者を育て、活躍する場となるユースバンド創設を準備中。募集の告知(ユースバンドのみ)はフェイスブックに。
定期演奏会は入場料一般1000円、高校生以下500円。荒木さんTEL090・3083・1075