
子どもの感性大切にする場に
パレットに並んだ絵の具、白い画用紙、鉛筆…。そこから生まれる表現の楽しさを子どもたちに伝えたい―。
朝日村のイラストレーター、オーハラユーコさん(36)が、小中学生の絵画・工作教室「アトリエ・ユモレスク」を4月、オープンする。
幼い頃から絵や物作りが好きだった。会社員を経て10年前、英国ロンドン留学でアートクラスを体験。その自由さに衝撃を受けた。アーティストとして活動し、いずれは子ども向けのアトリエを開きたいと決心。塩尻市でのアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)がきっかけで、茨城県から朝日村に移住した。
英国留学し感銘 自由な創作手法
動物のイラストが描かれたモビール、白い布に広がる絵の具のにじみ…。こども絵画・工作教室「アトリエユモレスク」の一角には、伸びやかなアート作品が飾られている。
「技術を習得するより、描くこと作ること全般を楽しんで、子どもたちの“引き出し”を増やしていけたら」と、イラストレーターのオーハラユーコさん。
アトリエ名の「ユモレスク」は、フランス語で「軽やかな」「気まぐれな」「形式のない」などの意味。教室が目指すイメージだ。
月2回、小学生は土曜の午前中、中学生は土曜の午後に開く予定。小学生はわくわく感を大切にして創作の楽しさへといざない、中学生は自分のやりたい事にじっくりと取り組める場にする。
児童教科書の挿絵や絵本などを手がけるオーハラさん。小学2年生の時、担任教諭に絵を無理やり直された悔しさが胸に残る。
以前はファッションデザイナーとして働き、大量生産、大量消費の現実にむなしさを感じた。海外で見聞を広げたいと資金をためて退職。25歳で英国ロンドンに留学し、芸術大学で受けたアートクラスに衝撃を受けた。
それまで図工や美術の授業は画材の使い方やデッサンの仕方など「正しい方法」を教わる場と思っていたが、ロンドンでは生徒が自分のやりたい事に自由に取り組める。仲間と意見や経験をシェアする時間もある。「この体験を子どもの時にしてみたかった」と心から思ったという。
塩尻滞在契機に夫婦で朝日村へ
「いつか子どもたちのアトリエを開きたい」。帰国後は子ども英会話教室や小児病棟でのボランティア活動などを経験しながら、2020年にイラストレーターとして独立。同年と翌年、芸術家が地域に滞在して創作活動をする「アーティスト・イン・レジデンス」で塩尻市に滞在した。
地元ワイナリーから譲ってもらったワインの搾りかすを絵の具にしてイラストを描くなど、自然素材を生かした創作も。初めて訪れた土地で自然豊かな環境や住民との交流に刺激を受け、移住を決意。昨夏、夫で建築家の伊藤聡宏さん(43)と朝日村に住み始めた。
自由なアート体験が転機となったオーハラさん。「作ることは自分の中の感性を形にすること。子どもたちの気持ちを大切にする場所にしたい」。評価でなく共感で子どもたちの可能性を広げていく。
21日は塩尻市北部交流センター「えんてらす」(塩尻市広丘吉田)の子育てイベントでオリジナルレターセット作りのワークショップ(参加費500円)を開く。朝日村のアトリエ体験会は25日午後1時半~3時(中学生)、26日午後(小学生)。各回参加費1000円。問い合わせはオーハラさTEL080・9560・2545またはメールhello@humoresque-art.com