
「今私は一人になってそっと抱きしめた溢れ出した言葉がもう迷わずに私であるために動き出したよ」…
松本市横田のシンガー・ソングライターmar.(マル)さん(33、本名・丸山理恵さん)が昨年7月に発表した「孤独にポップ」の一節。昨春、10年間の教員生活に区切りをつけ、音楽に専念する決意を歌った歌だ。
学生時代に作詞作曲を始め、コロナ禍による生活の変化で、音楽を人に届けたいと強く思うようになった。「表現を通じて多くの人と出会い、つながって、新しい世界に触れられた。自分を貫きながら音楽と共に生きていきたい」
3月19日には松本市開智1のコミュニティースペース「城町文庫」で、初のワンマンライブを開く。
シンガー・ソングライターmar.さんは大町市生まれ。幼い頃から音楽が好きで、ピアノとクラシックバレエを中学時代まで続けた。小学校高学年からは吹奏楽にも打ち込んだ。
大町高校(現大町岳陽高校)では軽音楽部でバンドを組み、ベースを担当。信州大教育学部では長野市のキャンパスに移った2年時に軽音楽サークルに入り、同学年の2人とバンドを結成した。
当時「自分って何だろうと、よく考えるようになった」。大学でいろいろな人に出会い、多様な価値観や個性に触れ、それまで深く意識しなかった内面に目が向いた。
思いを吐き出すように初めて作詞作曲し、メンバーに見せたのは2年時の冬ごろ。「ぜひ演奏しよう」と好評で、「うれしかったし、曲作りの魅力に気づけた」という。
中学の教員免許を取得したmar.さんは卒業後、英語・家庭科教諭として下伊那地域に赴任。バンド活動も続けていたが、メンバーそれぞれが忙しくなり、2年ほどで休止せざるを得なくなった。
mar.さん自身、やりがいを感じながらも仕事に追われた。「そういう中でも出てくるのは歌だった。悩んだりもがいたりした時、曲にすることで気持ちを整理し、自分を客観視できることもあった」。ふと浮かんだ詞や旋律を書き留め、パソコンでまとめた。
転機となったのは、高瀬中(池田町)に赴任して1年ほどした2020年初頭以降のコロナ禍。生活が一変し、もやもやした思いを抱えながら過ごす中で「作りためた曲を発表してみようか」との案が浮かんだ。
同年3月にYouTubeチャンネルを開設。「反響をもらえるのがうれしく、作った音楽を人に届けたい思いが強くなっていった」という。
教職との兼ね合いはとても悩んだ。「両立は難しいと感じていたし、その時しか表現できない音がある。今決断しなかったら一生できないと思った」。教員生活10年で、担任を務めたクラスの生徒たちが卒業するタイミングで決断した。
教え子たちには、卒業式後の離任式で発表。「応援します」とエールをもらい、今も動画にコメントをくれる子もいる。「一緒に悩み、学び、成長させてもらえた。自分で自分を信頼できるようになったのは子どもたちのおかげ」と、教員時代を振り返る。
1年近い活動を振り返り、「アーティストとしての自分のスタイルや方向性が見えてきた」とmar.さん。現在はライブ、動画配信のほか、年内発表を目指しソロアルバムを制作中。県外に活動を広げる考えもある。
「曲はその時々の人生そのもの。真っすぐに自分を込めて、昔と変わらず音楽を楽しむ思いを燃やしていきたいと思っています」
YouTubeチャンネルはこちらから。
【メモ】
19日のワンマンライブは午後2~3時、4~5時の入れ替え制。当日券1500円、前売り券1000円(ワンドリンク込み)。前売り券は城町文庫で販売。