「はぐルッポ」開設10年 不登校を考える

さまざまな事情で学校へ通えない小中学生などの支援・相談スペース「はぐルッポ」(松本市浅間温泉1)は、開設10周年を記念した講演会を2月に市内で開きました。「不登校」をテーマに、信州大医学部子どものこころの発達医学教室の本田秀夫教授が解説。話と質疑応答の一部を紹介します。

本田教授は、全国の小中学校の不登校児童生徒数は2012年から増え続け、21年度の中学生の割合は5%(20人に1人)。不登校予備軍は7人に1人いるとし、原因と対策などを話しました。
★学校に行きたくない理由とは
「学校が子どもにとっての楽しい場所なら、通いたい意欲は続く。しかし、平均的な7割の子どもに焦点を合わせたカリキュラムでは、授業がつらくなる子が出てくる。いじめや精神障がいなどはハイリスクでも原因の一部にすぎず、子ども自身による選択肢がほとんどないことが『登校拒否行動』につながるのではないか」
「子どもの特性として、過剰に周囲に合わせて頑張り過ぎる『過剰適応』により、疲れがどっと出てしまった結果も考えられる。その場合、一見本人は楽しそうに見えるが、実は対人関係に疲れていることもある」
★不登校になったら
「エネルギーの消耗による行き渋りや不登校の場合、充電のために休んでほしい。『どうせ私は』という言葉が出るような自己肯定感が低い時は、エネルギーが不足している。消耗し過ぎてしまうと回復までに時間がかかるので、小中学生のうちは無駄に消耗させず、思春期に向けてエネルギーをためた方がいい」
「中学3年の進路選択の時期になれば、本人が動くようになる。子ども自身が将来を考え始めた時に学校から助言をもらえるよう、親は先生とは良好な関係をつくっておく。また、はぐルッポのような学校以外にも居場所があると、将来の社会参加に役立つ」
「親が気を付けてほしいのは、『学校に行かないのは駄目な人間』という価値観を子に見せないこと。『学校へ行くなら〇〇をやってもいい』と言うのもよくない。行けたら回復だとは思わないでほしい。また、家庭内では『行く』『行かない』でもめるのではなく、将来の良好な親子関係のためにも子の相談相手になることが大事だ」

子どもへの対応は?

質問(1)不登校3年目の小学5年生の子どもがいる。本人は将来への不安が強く、「勉強していない自分は生活していけないのではないか」と心配している。多様な生き方があるという話をしてもイメージできない様子。寄り添い方を教えてください。
本田教授「子どもが多様な生き方をイメージするのは難しい。親子関係にもよるが、慰めにしか聞こえない。不安を訴える子には、『心配だよね』と気持ちをそのまま受け止めるといい。ばかな話が一緒にできるくらい仲良くすることが大切だ」
質問(2)子どもがずっとゲームをしている。本人は「学校や嫌なことを考えたくないから」と言うが、ゲームが楽しいと余計に学校へ行かないのではないか。
本田教授「学校へ行っていない自分がつらいから、それを解消するためにやっている可能性がある。その場合、『ゲームをやめて勉強したら!』と言うのが一番いけない。好きだからやっているのではないので、ゲーム以外に好きなことを見つけることが大事だ」

「はぐルッポ」は水・金曜の午後1~5時(月1回月曜も)、木曜午後2~4時(月2回、学習支援)に開所。TEL0263・31・3373