
奏者個人の思いが出る演奏を
20~30代の若手演奏家が主体のオーケストラ「信州アルプス交響楽団」が26日、大町市でデビューする。県内に拠点を置き、活動を続けていく方針だ。
大町市文化会館で開かれる合唱の催し「大合唱2023」(同市、同市教育委員会主催)で、ワークショップ参加者でつくる合唱団とベートーベン「交響曲第9番(合唱付き)」、「花は咲く」で共演。映画音楽「サウンド・オブ・ミュージック」メドレーも演奏する。
新楽団は今回の演奏会を機に、信州大学交響楽団のOB、OGらを中心に結成された。名称は初演地である岳都・大町にちなんで命名。「サウンド|」の選曲も、アルプスの山々が出てくる映画で土地柄に合うからだ。
コロナ下で制限された、集い歌う、奏でる、聴く楽しさ。北アルプスの麓で始動する楽団とは。
地域に根ざした若く元気なオケ
学生オーケストラ・信州大学交響楽団(信大オケ)のOB・OGらを主体に、新たに結成された「信州アルプス交響楽団」。団員は県内外のプロ、アマチュアの約80人。26日の本番を前に、各地から何度も大町市文化会館に集い、熱の入った練習を続けている。
新楽団代表でコンサートマスターの嶋田雄紀さん(27、滋賀県)は、信大経済学部在学中、信大オケでもコンマスを務めた。今公演の合唱指導者の中村雅夫さん(松川村)、指揮者の松下京介さん(神奈川県)と企画を練る中で、「若くて元気のあるオケをつくって演奏会を盛り上げよう」となり、嶋田さんが中心となり立ち上げに動いた。
各パートの主要ポジションを若手で占めるオーケストラは「あまりないのでは」と嶋田さん。「皆が同じ思いで音楽をつくり上げる考えもいいと思う」と前置きした上で、「奏者個人の思いがそのまま出てくるのは面白い。無理に合わせるより、個人が一番いいと思う音を出した結果が一つの音楽となり、客席に届くのが理想。キャラクターが出る演奏をしたい」と話す。
26日の演目の一つが、ベートーベン「交響曲第9番」だ。ベテラン奏者なら何度も奏でた機会があるであろう「第九」も、新オケでは初挑戦のメンバーが多い。「ベートーベンのいろいろな(音楽的)仕掛けに驚きながら演奏する、新鮮な気持ちが伝わると思う」と嶋田さん。計約230人の合唱団との共演は「合唱のエネルギーを浴びる機会はコロナ下で少なかった。負けずに仕上げないと」と張り切る。
「勢いで第九のような大曲に取り組みたいし、クラシック音楽の敷居を下げる活動もしたい」。今後は、要望があれば少人数の演奏形態にも対応し、地域に根ざした活動を目指す。
オーボエ奏者で松本市出身の鈴木麻由佳さん(26、東京都)も信大オケの出身。「年の近い世代が集まり、県内を拠点とした活動にすごくわくわくする。少人数の室内楽やアンサンブルにも挑戦したい」。仕事をしながら練習のたびに東京から足を運ぶが、「苦にはならない」と笑顔だ。
合唱の受講生も共演を楽しみに
大町市文化会館では本年度、「うたうPROJECT」と銘打って合唱に特化したプログラムを展開。親子で歌う合唱、本格的な合唱、それぞれワークショップを開いて合唱の裾野を広げ、本公演を発表の場とした。
同市社の坂口茜さん(43)は、2016年の同会館30周年記念の演奏会に参加して初めて第九を歌い、「また歌いたい」と応募。親子で歌う「ファミリー合唱団」にも長男、夫と参加して「花は咲く」を披露する予定だ。「きれいなハーモニーが出来上がる時が魅力。コロナ下でみんなで歌う機会は限られたのでうれしく、オケとの共演も貴重な機会でとても楽しみ」と話した。
午後2時開演。全席指定で1階席3000円、2階席2000円。未就学児入場不可。同館TEL0261・22・9988