
身近な自然楽しんで子育てを
シラカバの樹皮を帯状に切り、折り曲げ、組み合わせる…。御嶽山をイメージしたデザインのブローチ作りだ。真剣に取り組んでいるのは、木曽町開田小学校の5、6年生たち。指導するのは同町開田高原の会社員小林涼子さん(39)と、雑貨店経営川下美帆さん(36)だ。
自然素材を通じて開田の魅力を児童に伝えようと9日、初めて行われたワークショップ。二人は開田高原のシラカバの魅力に引かれ樹皮細工の作品作りをしており、住民グループ「開田盛り上げ隊」のメンバーでもある。腕を見込まれ同校から講師を頼まれた。
ブローチは花を添えてコサージュにして、16日の卒業式で6年生が自身の胸に飾った。5年生の作品は来月の入学式で1年生が着ける。
環境への配慮も児童らに伝える
木曽町開田小学校はシラカバの木々に囲まれ、教室から御嶽山を望める美しい場所にある。小林涼子さんと川下美帆さんが、児童に作り方を教えたシラカバ樹皮細工は、100年以上持つといわれる。「身近な自然をお守りのように身に着けることで、安心できると思う」と小林さん。
木が水を多く含む梅雨時に、シラカバの表皮に一筋の切り込みを入れると、白い樹皮がきれいに剥がれる。樹皮に油を塗り、内側を表に出して折り、組み合わせて編むことで、シラカバ樹皮細工となる。寒さが厳しい開田高原では特に木目が濃く、時を重ねて色つやが増し、味わいが出る。
材料となる樹皮は、あらかじめ持ち主の許可を得てから採取する。できるだけ山奥の、人目に付きにくい木を選ぶ。景観や自然環境への配慮についても、ワークショップで子どもたちに伝えた。今後は樹皮を採る作業や植樹も授業の中で体験できるように計画中だ。
卒業式で着けたブローチは、一生の宝物として思い出となるだろう。
子育てしやすい環境づくりに力
小林さんと川下さんは、住民有志のグループ「開田盛り上げ隊」の一員として、SNS等で地域の魅力を発信し、子育てしやすい環境づくりに力を注いでいる。活動の一環として「白樺部」を結成した。
二人とも、自らの子どもが開田小に通っているが、開田高原での出生児が2022年度は「0人」だと知り、大きな衝撃を受けた。自然豊かな環境で子育てする仲間を増やすため、シラカバの魅力を今後も伝えたいという。
まず、1歳の誕生日を迎えた子どもに、出生時の頭囲通りに作ったシラカバ樹皮の冠を贈ることを企画。19日には、今月で1歳になった木村季和(ときわ)ちゃんら4人に冠の授与式を開いた。
川下さんは来月6日、開田小の入学式の会場を、開田高原の自然素材で飾る予定だ。作業は開田盛り上げ隊や同校PTAが協力する。川下さんは「高原で身近に目にする自然の草花や木で会場を飾ります。みんながワクワクできる空間にしたい」と話している。