
俳人の降旗牛朗さん(63、松本市大手4)が19日、安曇野市堀金公民館で「極々私的な臼井吉見体験」の題で講演した。『御伽(おとぎ)草子』の一つの主人公・物臭(ものぐさ)太郎を愛したという安曇野市出身の編集者・小説家臼井吉見(1905~87年)の「精神世界」について解説した。
降旗さんは、中学3年の夏休みに読んだ臼井の代表作『安曇野』をきっかけに、多くの著作に触れた。自身の教師時代には、担任だった中学3年生の卒業祝いに臼井の『自分をつくる』(79年)を贈ったこともある。
『自分をつくる』で臼井は、教育の中軸は「自己教育」だとし「その中核は、自分と異質な人間との対話です」などと記述。あとがきでは、東筑摩塩尻教育会館(松本市開智2)の前庭に腹ばいに寝そべるものぐさ太郎の像に触れながら「ぼくは郷里の先輩として、かねて物臭太郎君をことのほか敬愛しています」と述べている。
降旗さんは、信濃毎日新聞(81年1月)に掲載された「いま、保守主義とは」も紹介。臼井は「納得しないことには立たない。おれのわからんことには、おれは賛成もしないし、立たないというんだ」「とにかく納得しないことには“ものぐさ太郎”のごとくあれ、です」と、太郎を引き合いに政党のあり方を論じた。
講演会は臼井吉見文学館と同館友の会が主催。90人近くが参加した。