オルガンの奥深さ伝えた原田さん

松本市島内の市音楽文化ホールの専属オルガニスト・原田靖子さんが、31日で退任する。2014年度に就任し、演奏会やオルガン講習会、出張コンサートなどを通して、オルガンの魅力を広めてきた。これまでの活動や思いと、今後について聞いた。
―親子で楽しめる演目や出張コンサートに力を入れた。
14年度から7回、こどもオルガン劇場「字のない手紙」などを上演した。芝居やダンス、紙を用いた造形美術とオルガンを組み合わせた作品で、それまでホールに足を運んだことのない世代に来てもらえた。
子どもの世界の豊かさは大人にも響いたようで、保護者が「子育ての活力になった」「今まで頑張ってきて良かった」などと感想を寄せてくれた。
17年度、持ち運びできる小型の「ポジティフ・オルガン」がホールに導入された。新たな取り組みとして、公募で地域の保育園や幼稚園、福祉施設や児童センターなどに年3~5回出向いた。初めて見るオルガンや聞く音色に、子どもたちは目を輝かせ、耳を澄ませた。大切な演奏会だった。
―オルガン講習会は。
初心者から発展コースまで、多様なレベルやニーズに合わせて開いてきた。子育てや介護など、忙しい生活の中で通ってくれた人もいた。その皆さんとオルガンに向き合い、魅力をシェアでき、尊い時間だった。
オルガンは長い歴史があり、演奏が難しく奥深い楽器。ゆっくり時間をかけて知ることが多いので、長く続けてほしい。
―今後の活動は。
個人的に市民から預かっているリードオルガンがある。それを活用しながら、地域の人とコラボレーションして演奏会ができたら。
―市民へメッセージを。
専属オルガニストとして最後の演奏会(3月10日)は、ステージに上がった瞬間に会場の一体感を感じ、すべての曲が客席の皆さんと一緒に演奏しているように感じた。演奏家冥利(みょうり)に尽きる。
9年間、地域の方々に本当に支えられてきた。音文のオルガンはとても弾きやすい。それは、多くの人が弾いてきたことで音楽の風がきちんと通され、大事にされてきた証拠。携われて幸せだった。
音文ホールは「楽都松本」の大切な存在。ビジョンを持って運営していってほしいし、地域の皆さんにはいっそう見守り、育てていってほしい。