麻の魅力伝える洋裁師古田さん

「長く愛用して」そば店で展示販売会

夏の素材。洗濯が難しい。しわになりやすくアイロンがけが大変─。麻にこんなイメージを持つ人は多い。洋裁師の古田麻由里さん(60、山形村)は、麻への先入観を払しょくしようと活動する。
ハンドメード作家のオンラインマーケットで「atelier kanon(アトリエ・カノン)」の店名で、麻のかっぽう着や衣類などを販売する。上質な素材と丁寧な縫製で麻の魅力をPR。「10年麻」「一年中麻」を提案する。購入者からは「着やすい」「丁寧な作り」などの感想が寄せられる。
4月11日~5月14日、山形村の「そば処(どころ)木鶏(もっけい)」で、同店の9周年に合わせ展示販売会を開く。木鶏の店主夫妻も、古田さんのエプロンやかっぽう着の大ファンで企画した。

洋裁店営む父「布」が好きに

インターネットでハンドメードマーケット「Creema(クリーマ)」の「atelier  kanon(アトリエ・カノン)」のページをのぞくと─。「10年割烹(かっぽう)着」「育てるリネンのロングワンピース」など、麻の製品が並ぶ。作っているのは洋裁師・古田麻由里さんだ。
古田さんの父は塩尻市内で洋裁店を営んでいた。店に生地が飾られていたり、父について布の仕入れに行ったり。そんな原体験から布が好きになった。
高校卒業後は東京のファッション専門学校「東京モード学園」に入学。卒業後、アパレルメーカーにパタンナーとして入社したが、3年ほどで退社。服作りは子育てなどで中断、知り合いに頼まれれば作る程度だった。
2013年、日本アロマ環境協会のアロマセラピスト、アロマインストラクターの資格を取得し、山形村の自宅で「アロマサロン香(か)音(のん)」を開いた。
コロナ禍で、サロンの来客数が減少。世間はマスクが足りない状況になった。何か役に立ちたいと、麻で布マスクを作り始めたのが転機となった。「Creema」で販売、ブランド「atelier kanon」を立ち上げ、再び洋服と向き合うようになった。
「服を作るより布が好き」というだけに、天然素材、特に麻にこだわる。「麻にはリネン、ラミー、ヘンプの3種あり、抗菌性、通気性、保温性がある。夏は1枚で涼しく、冬は重ね着すると暖かい」と古田さん。

丈夫・風合い麻にこだわり

麻は丈夫で、使えば使うほど味が出る。洗濯してもほつれないように、縫い目が直接肌に当たらないように折り伏せ縫いを取り入れるなど、縫製にも注意する。「10年割烹着」は10年以上使ってほしい、母から子へと長く着てもらいたいと名付けた。
麻はしわが寄りやすく、それが風合いになる。洗いっぱなしを着れば、いい具合に柔らかさが出る。アイロンをかければぴしっとなり、同じ服でも表情が違うのも面白い。着れば着るほど着心地が良くなる。「服やかっぽう着を育ててほしい」と古田さん。
そば処木鶏(どころもっけい)の女将(おかみ)、塙操(はなわみさお)さん(44)は、古田さんに自宅用のエプロンを作ってもらったことがある。着やすさ、動きやすさ、素材の良さで大ファンに。開店9周年に合わせ、店主の和貴さん(41)の仕事着、操さんやスタッフのエプロンを依頼した。多くの人に知ってほしいと店での展示販売会も提案した。
パタンナーとして働いていた頃は、売れる物しか作れず「つまらなかった」。今は作りたい物を作っている。木鶏の販売会では、顧客とじっくり向き合える。父の営んだ洋裁店のようだ。「その人に合った物を作る。自分の洋服作りの原点で理想」。古田さんはその日を楽しみにしている。

【atelier kanon 展示販売会atそば処木鶏】4月11日~5月14日。4月23日と5月14日は古田さんが店におり、一点物販売。1部午後3~4時、2部4~5時で、各5組限定。予約制。木鶏TEL0263・98・2099