
生坂村集落支援員の佐久間さん
ニワトリの生態を見て養鶏を知る場に─。2月に開業した地域循環型養鶏「にわにわ自然養鶏」には、そんな思いが込められている。生坂村京ケ倉の麓にある小さな養鶏場だ。
生坂村集落支援員の佐久間拓郎さん(35)と妻の由輝子さん(40)が営み、「ニワトリに会える直売所」とうたい、ニワトリの健康と自然環境に配慮した卵を販売する。卵を村の特産品に|と、京ケ倉から名付けた「きょうがくらん」で地域のブランド化を目指す。
純国産鶏の「あずさ」と「岡崎おうはん」38羽を平飼いしている。「好奇心旺盛だったりマイペースだったり。ニワトリ一羽一羽の性格や表情が異なり、個性豊か」と二人。ニワトリや卵への理解を通じ、食の大切さを考えてほしいと願う。
食品ロス削減飼料は村内で
生坂村の「にわにわ自然養鶏」に取材に行くと、おんどりが「コケコッコー」と鳴き、元気よく出迎えてくれた。ニワトリたちは養鶏場内で走り回ったり、止まり木で羽を休めたりと、伸び伸びと過ごす。
ニワトリが食べる飼料の多くは村内でまかなう。農家や個人、店舗などから古くなった米や麦、米ぬか、おから、のこくず、野菜などを譲り受け、それらを乳酸発酵させた飼料を手作りして与えている。そんな「捨てられてしまう食べ物」を地域の「未利用資源」とし、食品ロスを削減する。飼料の価格高騰に左右されない経営にもつながる。二人は「村内の人たちに支えられている」と感謝する。
卵は、黄身の色が薄めで崩れにくい。直売所で購入すると1個70円。6個420円(パックあり450円)。完成したパッケージには「きょうがくらん」の文字。由輝子さんのデザインで、京ケ倉、ヒカゲツツジ、ニワトリ、卵が描かている。子どもから大人まで楽しめそうな、絵本のようなデザインだ。文章は拓郎さんが書いた。
千葉県出身の拓郎さんと福岡県出身の由輝子さん。2015年に由輝子さんが生坂に移住し、17年に拓郎さんも続いた。自給自足の生活をしようと、米作などを始め、ニワトリ6羽の飼育も始めた。
ニワトリとの出合いの場も
もともと動物が苦手な拓郎さん、由輝子さんは、「畜産動物を幸せにできない」と20代から動物性食材を食べない「ビーガン」だった。養鶏をやる予定は全くなかったが、ニワトリを飼う中で、循環していることに気づいた。
畜産をただ否定するのではなく、「向き合ってみよう、知ってみよう」と考えた。卵や鶏肉は食べるが畜産の現状を知らない人が多いとし、「ニワトリと触れ合って畜産動物について考えるきっかけになれば」と話す。
同養鶏場では、鳥インフルエンザ予防の対策をしつつ、来場者にニワトリとの出合いの場を与えている。子どもから大人まで、観察したり餌をあげたりといった“ふれあい”ができる。情報を知り、来た人々が餌になる資源を持ってきてくれることも増えたという。
今後は、学校給食などへの販路拡大などを目指す。「環境に優しく持続可能な養鶏を志し、ただ生産するのではなく、人とのつながりを楽しんでいきたい」と話す。
土曜営業。午前10時半~午後3時。道の駅いくさかの郷で販売。食材の量り売りなどをする安曇野市のハカルazumino(豊科)では、パックフリーで1個から購入可能。問い合わせはメールniwaniwa-niwatori.stores.jp インスタグラム