レコード鑑賞会「おとはこ」

白馬村北城の「白馬ノルウェービレッジ」のホールには、レコードのふくよかな音色と往時の思い出に浸る穏やかな至福の時間が生まれる。毎月第3金曜の昼下がり。「レコード盤」に親しんだシニア層の好奇心をくすぐり、憩いの場や地域の居場所を目指すレコード鑑賞の集い「噂(うわさ)の音楽鑑賞会おとはこ」がその時だ。会が始まって間もなく1年を迎える。

月1回ジャンルさまざま

参加者が持ち寄ったり、寄贈されたりしたレコード盤の中から希望の曲を順に流す。歌謡曲、演歌、クラシック、ジャズ、映画音楽、童謡などジャンルはさまざま。
映画音楽の「禁じられた遊び」は、「ギターの音色に感じ入り、中学生の時にギターを買って最初に覚えた曲」。ピンキーとキラーズの「恋の季節」は、「高校生ぐらいの時に聞き、衝撃的な曲でした」。
リクエストした人が選曲理由や思い出などを語ると、運営スタッフが曲間の溝を狙ってそっとレコード針を落とす。
会場は、25年前の長野冬季五輪の際ノルウェーのゲストハウスとして建てられた木造の建物。柔らかなアナログの音色と相性が良く、耳や心にじんわりと染み込む。目を閉じて聞き入る人、体でリズムを取る人、歌詞を静かに口ずさむ人…。参加者の中心はシニア世代で、思い思いにこの時間を味わっている。
進行役は、白馬村地域包括支援センター生活支援コーディネーターの塩澤佐和子さん。曲にまつわるエピソードを紹介したり、ジャケットを見せて歌手の名前を当てるクイズを交えたりして和やかに会を進める。映画音楽が流れると、かつて村や近隣に映画館やボウリング場があったという話題に及び、みんなで盛り上がった。塩澤さんは、曲が流れる間に得意の筆文字で書いた曲名を掲示するなど、工夫を凝らして楽しい空間をつくり出している。

鑑賞会を開くのは大北、安曇野地域在住で県シニア大学の卒業生など50~80代の有志7人。県長寿社会開発センター大北支部と白馬村地域包括支援センターの協力で「チームおとはこ」を結成。機材を持ち寄り、昨年5月から月1回のペースで開催している。
レコードプレーヤーがなく手持ちのレコードが聞けない人の楽しみを取り戻したり、昔の記憶を思い出して脳の活性化につなげたりするなどの効果もある鑑賞会。同支部シニア活動推進コーディネーターの佐藤雅法さん(59)が、県内他地域で開かれる同様の取り組みを知り、「大北地域でも」と、地元団体や個人に声をかけて賛同者と一緒に企画。静かに音楽を楽しむ集いはコロナ禍でも開催しやすい点にも着目した。
「おとはこ」の名称はジュークボックスのイメージ。いろんな音楽や思い出が詰まった玉手箱のようなわくわく感を名前にも盛り込んだ。
数回参加している亀谷宣子さん(79、同村北城)は「昔聞いた音楽や知らない曲も聞けて、懐かしさや驚き、発見がある。いろんな情報も吸収でき癒やされる場所」と喜ぶ。
メンバーたちは「何の境界線もなく、シニア世代以外の誰でも大歓迎。レコードを聞いたことのない子どもや若い世代にも参加してもらい、緩くつながれる場になれば」と期待する。
毎月第3金曜午後1時半~3時半に同会場で開催。参加費無料。問い合わせは同支部TEL0261・23・6507