
「名前」を考える
入園入学、進級にあたり、自己紹介をする機会も多いと思います。今回紹介する本は「なまえのないねこ」です。名前についていろいろ考えさせられる物語です。
「ぼくはねこ。なまえのないねこ。だれにもなまえをつけてもらったことがない。」からお話は始まります。なんだか夏目漱石の「吾輩は猫である」のような出だしです。この名前のないネコは野良で、いつでもただの「ねこ」でした。
街の中を歩いてみると、他のネコはみんな名前を持っています。見た目だったり、飼い主の家にちなんでいたり。びっくりすることに名前を二つ持っているネコもいました。
「ねこ」は途中で出会った「じゅげむ」というお寺のネコから、「じぶんでつければいいじゃない。じぶんのすきななまえをさ」と言われます。そこで街を歩きながら、自分の好きな名前を探します。
歩くうちに雨が降ってきます。「ねこ」の心の中は雨の音でいっぱいになります。「ねこ」は自分の好きな名前を見つけることができたでしょうか。そして本当に探していたものは名前だったのでしょうか。読み終えた後は、きっと大切な人の名前を呼びたくなる、そんな物語です。
絵も本当にすてきです。日常がリアルに描かれ、そのまま絵本に入ってしまえそうです。ネコ事情の描写も細かく表現されています。表紙裏にネコたちがたくさんいて、背表紙裏ではそれらみんなに名前が付いているのも面白いです。