
終戦後、旧満州(中国東北部)に取り残された日本人の引き揚げ埠頭(ふとう)があった中国遼寧省葫蘆島(ころとう)市と民間交流活動をしている「信州葫蘆島友の会」の10人は3月21日、阿智村の満蒙(まんもう)開拓平和記念館を訪れた。同館で21~26日に展示された中国人画家の絵を鑑賞したり、講演を聞いたりした。
絵は中国人画家王希(ワンシー)奇(チー)さん(62)の「1946」。命からがら葫蘆島港に着いた日本人が、引き揚げ船に向かって何百人と列をなして歩く様子を暗い色調で描いた。着想から完成まで5年余かかった縦3メートル、横20メートルの大作。
同省瀋陽にある魯迅美術学院油絵学部教授の王さんは、骨壺を抱いて引き揚げ船を待つ少年(後に少女と判明)の写真をインターネットで見て、その残酷さに衝撃を受けて制作したという。
会員は、自身や家族を作品の中に捜す思いで見入っていた。「父はシベリアへ送られ、逃避行で乳児の長男を亡くし、一人乗船した母がこの中にいる」と話す白木まち子さん(72、朝日村古見)は、講演会場で自作のCD「謝謝葫蘆島」を王さんに贈り、絵への感謝を伝えた。
講演会で王さんは「古里に帰りたいと願いながら船に乗れなかった人々も、蛍の光となって日本に戻っている」。この言葉に慰められた人も多い。取材した記者も1946年、3歳の時に同港から引き揚げ、妹は中国の土に眠る。
展示会は同館の開館10周年と飯田日中友好協会60周年を記念し、戦争と平和、日中友好について考える機会にしたいと企画。東京、神戸、舞鶴(京都府)などでも開催された。