上演は“充電次第” 野らぼうが挑むゼロカーボン演劇

松本市を拠点に活動する劇団「野(の)らぼう」が、「ゼロカーボン演劇・限られた電力編」と銘打った人形劇芝居を、あがたの森公園で上演している。上演に必要な電力を太陽光発電だけでまかない、バッテリーがフル充電になったら上演するという、天気次第の不定期開催。上演は30日まで。観劇予定が立てられない未知なる体験だ。
演目は、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」を土台にした、野らぼうの新作オリジナル「ロレンスの雲」。老夫婦が宇宙を旅する未来の話と、引かれ合うロミオとジュリエットという過去の話が交錯する。
老夫婦の話を生身の役者が演じる一方、ロミオとジュリエットの話は人形を使って表現。登場人物たちのたたみかけるような掛け合いと人形のかわいらしい動きなどが、年齢を問わず楽しめる。
劇団所有の携帯型バッテリー(出力2千ワット)がフル充電になった翌日にのみ上演。これまで1、4日と順調だったが、その後、曇りや雨の日が続き、3回目の上演までに5日間を要した。
「『晴れたらやるらしい』という、劇団と客の新しい距離感を試してみたい。『約束』に苦しみがちな現代に『寛容さ』を生み出す仕掛けでもある」と、作・演出を手がける前田斜めさんは言う。
上演時間は約1時間。1日は終演直後に電力が尽きて会場が真っ暗になり、客席からは「ぴったり終わった」と拍手が。一方、4日の公演では、ラスト5分で電力がなくなり、役者たちが手動発電のライトを手で回して乗り切った。
前田さんは「『約束されない』感覚を、観客にどう感じてもらえるかが楽しみです」。
午後8時開演。場所は芝生広場東側。一般2千円、中高大学生千円、小学生500円、未就学児無料。上演情報は公演特設サイト(「ロレンスの雲」で検索)か劇団のツイッターで。客席は屋根付きで雨天上演、荒天休演。前田さんTEL080・6425・9861