加藤登紀子さんと大学生 平和を歌う

コンサート「百万本のバラ物語」

信州大、松本大、長野大の合唱団員60人以上が、歌手加藤登紀子さんのバックコーラスを務める。5月13日にキッセイ文化ホール(松本市水汲)で開くコンサート「百万本のバラ物語」で、最後に歌う「百万本のバラ」だ。
ロシア語の歌詞を日本語に訳し、37年間歌い続ける加藤さん。コンサートに、非戦・平和への強い思いや祈りを込める。現在は、ロシアの侵攻により故郷を逃れたウクライナの人々への支援活動にも力を入れている。その原動力は、終わらない戦争への「怒り」だという。
今回、一緒にステージに立つのは、加藤さんから見れば孫の世代の学生たちだ。歌を譜面で初めて知った人もいる。「なかなか経験できない、すごいこと」と緊張しながら、大舞台に臨む。

「大事なのはラトビア語をしゃべること」
4月7日、キッセイ文化ホールのリハーサル室。指導する県合唱連盟理事長・中村雅夫さん(63、松川村)の声が響く。加藤登紀子さんのコンサート「百万本のバラ物語」(5月13日)に出演する学生たちの初練習だ。
信大、松本大の約30人が参加。ソプラノ、アルト、テノール、バスの4パートに分かれ、中村さんに合わせ歌を重ねる。初めのうちは譜面を見ながら遠慮がちに声を出していたが、終盤には立ち上がり歌う人もいた。
当日の出番はラストの「百万本のバラロングバージョン」で約9分。元はラトビアの子守歌だったことから、前半はラトビア語の歌詞で歌う。
学生の出演は、ホール館長の金井貞徳さん(71)が中村さんに相談し実現した。
「私たちの世代ではあまり聴く機会のなかった人(加藤さん)のコーラスを担当するのは、人生でよい経験になる」と松本大の曽根原萌愛さん(4年)。
信大混声合唱団副団長の宇佐美孝貴さん(農学部3年、伊那市)、同合唱団の学生指揮者・松山瑞季さん(経法学部3年、松本市)は「親に話すと『すごいこと』と言われ、事の重大さに気付いた」「腰を入れてやらなければ…」と気を引き締めた。
これを一つの機会に「平和への願いを学生たちに伝えていくことが大事」と中村さん。学生たちが加藤さんの思いを受け止め、ステージでどう表現するか。バックコーラスの練習は、前日のリハーサルを含め計4回だ。

戦争に正義ない 自分の力大事に

加藤登紀子さんは4月6日、松本市を訪れキッセイ文化ホールで記者会見を行い、信毎メディアガーデンも訪問、コンサートへの思いを語った。
ロシアによるウクライナ侵攻から1年以上がたつ。中国・ハルビンで生まれ終戦後、日本に引き揚げた自身の生い立ち、避難民としての生活を強いられるウクライナの人々への思いなどを語りつつ、「戦争に正義はない。結局は戦場にいる人が被害者だ」と憤る。
戦争のない世界を実現するために「私たちは非力だけれど無力ではない。自分の持っている力を大事にしたい」と述べた。
加藤さんは昨年、CD「果てなき大地の上に」を発売。売り上げの全額を、認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF、神谷さだ子理事長、松本市浅間温泉2)に寄付している。松本が全国各地で開くツアー公演の皮切りとなる。

【メモ】
コンサート「百万本のバラ物語」は5月13日午後4時から。鎌田實JCF顧問を迎えたトークもある。文化庁の子供文化芸術支援事業で小学生~18歳の約400人を招待する。一般5000円、25歳以1000円(全席指定)。問い合わせは同ホール(TEL0263・34・7100)へ。