
折り紙に励み個性羽ばたく
折り紙と絵画を融合させたアート作品「折り紙絵」の制作に情熱を注ぐ高校生がいる。信濃むつみ高校(松本市)3年の一本木凰雅(おうが)さん(17、大町市常盤)だ。小学3年生から熱中し続ける折り紙の作品に独創性を持たせようと、得意な絵と組み合わせた。
作品の一部分を折り紙で立体的にすると、面白さが増す。大きさの異なる鶴やかぶとの折り紙を多数用い、物の形や輪郭などを表現。豊かな発想力も交え、折り紙作品の可能性に挑戦している。
自閉スペクトラム症と診断された一本木さんは、対人関係に難しさなどを抱えるが、折り紙と出合って自己表現をしながら、自信や励みにつなげてきた。
5月7日まで、折り紙、絵画含む約50点を展示する初の作品展を、ギャラリーねむの木(同市大町)で開いている。
初の作品展に5年間の力作
一本木凰雅さんの作品展には、ここ5年間で制作した力作が並ぶ。ひときわ目を引くのが、トラの顔が題材の「折り紙絵」の作品だ。黒い背景に左右対称の構図で、右半分はアクリル絵の具の線で描き、左半分は大きさや柄の異なるかぶとの折り紙を、100個ほど配置して表現している。高校1年生で折り紙絵に挑戦し、約半年を経てようやく納得のいく仕上がりに。題名は「自信作」とした。
「立体的な食べ残し」と題した作品は、鯛(たい)の折り紙を頭の部分を残して切断し、体の部分は絵の具で骨を描いた。75センチ四方の紙で折ったかぶとを縦半分に切り、中身が出てきた設定で、とろけたチーズや機械の内部などを描いたものもある。
最新作「両極端な翼」は縦90センチ、横180センチの発泡スチロールの板が“キャンバス”。2枚ある翼の1枚は、折り紙の鶴とかぶとを計200個ほど用い、色鮮やかにかたどった。もう1枚は発泡スチロールをデザインナイフで彫って、くすんだ色合いに仕上げた。
その他、折る工程が約400回という超高難度の「死神」、偶然できたというオリジナルの「海月(くらげ)」といった折り紙作品や、花や宇宙、海の生き物などをテーマに、多彩な画材と技法で仕上げた絵画作品も見応えがある。
母の折り鶴が好奇心を刺激
一本木さんが折り紙にのめり込んだきっかけは、検査入院中に手持ちぶさただった母の英里さん(45)から渡された、薬包紙で折った鶴。「何じゃこりゃ!紙から何かができることにびっくりした」と一本木さん。飾り気のない折り鶴が少年の好奇心を刺激して以来、紙を見れば手当たり次第に折る日々が始まった。
外出先でも歩きながら折り、紙がなければ母から買い物のレシートをもらった。「今だから笑い話ですが、学校のプリントや教科書も折っていました」。折り紙が得意な小学校の特別支援学級の教員の教えもあり、めきめき上達した。
発達障がいの特性から、周囲になじみにくいという困難を抱える中、「手先だけに集中できる好きな時間」だった。作品を贈れば喜ばれ、励みになる。「もっといい作品を作ろうと、どんどん折った」。英里さんは「いろんなことの原動力や自信になる。息子が折り紙に出合えたのは奇跡」と話す。
世界的に活躍する折り紙作家・布施知子さん(大町市八坂)に作品を見てもらった際、「オリジナリティーのある作品を」と助言された。今は絵画との組み合わせで個性を打ち出す。一本木さんは「自由な点が折り紙の楽しさ。まだまだたくさんチャレンジしたい。面白いと思って見てもらえたら」と熱っぽく語る。
作品展は午前10時~午後5時。25日は休み。