仏壇や家具など家に合わせ製作 建具職人の古幡英嗣さん

家に合うふすまやドアを作ったり、取り付けたりと、家の中の物を手がける建具職人。家の造りが多様化し、オーダーメードの家具を作る職人もいる。古幡木工所(松本市波田)の2代目、古幡英嗣(ふるはたえいじ)さん(51)は、家具だけでなく家に合った仏壇を製作する。
4年前、亡くなった母の仏壇を作ったのが最初だ。「仏壇は買うもの」と思って店に出かけたが、しっくり来ない。「自分で作れるのではないか」と思い立ち、3週間ほどで完成させた。
小さい頃から物作りが好き。高校卒業後は父の治さん(81)と異なる道を選び、東京で就職した。だが、「建物の一部でも造りたい」とUターン。父の後を継いだ。「木の良さを伝えたい」。そんな思いで取り組んでいる。

工夫を凝らして母の仏壇を自作

古幡英嗣さんの家には、高さ140センチ、幅50センチ、奥行き40センチほどの自作の仏壇が置かれる。タモ材製で、くぎを使わないほぞ接ぎの技術を使っている。塗装はあえてせず、木が日に焼け味が出てくる過程を楽しむという。仏像の後ろに木目がきれいに入るよう工夫している。値段も抑えられるのが魅力だ。

建設会社を辞め職人の父に学ぶ

古幡さんが建具の道に入ったのは25歳の時。古幡木工所を営む父、治さんの後は絶対に継がないと高校卒業後、東京で建設会社に就職した。現場監督で、職人をまとめていたが、小さい頃から物作りが大好きだったこともあり、物足りなさを感じるようになった。「建物の一部でも自分で造って納めたい」
父、治さんが建具製造販売の木工所を営んでいる。治さんに「帰ってこい」と言われたことも戻るきっかけになった。最初は迷ったが、手に職を付けようと心が決まった。
昔ながらの職人かたぎだという治さんに、のみやかんな、のこぎりの使い方など、一からたたき込まれた。怖くて毎日びくびくしていたというが、「怒りながらも丁寧に教えてくれた」と古幡さん。10年ほどたち、独り立ちした。
現在は、父に教えてもらったことに加え、つり戸式の引き戸といった現代建具も手がける。他にもクローゼットの扉、洋式のドア、オーダー家具などさまざまなものを作った。
机、テーブルといった家具は、大きさ、機能など、既製品ではどこか我慢する部分が生じることもある。古幡さんは「大きさ、使い勝手など、家や好み、希望に合わせて作ります」と話す。
家具以外にも、神棚やほこらを作ったり、お札(ふだ)を入れるケースを手がけたり。家が多様化し、マンションなど仏壇を置くスペースがないケースも。家に合わせた仏壇の依頼が来ることもあるという。
どんな綿密な設計図を作るのだろうとノートを見せてもらった。フリーハンドで作るものの絵が描かれている。基本の形、寸法を頭に入れるだけで、図面を引かないのが古幡さん流。「作っている最中に新しいアイデアが生まれてくることもある。設計図を作ったり、しっかり絵を描いたりすると、その通りに作らないといけない」からだ。ノートには、絵とアイデアがびっしりと書き込まれている。
「木が好き、物作りが好き」という古幡さん。高齢化や後継者不足で、廃業する建具店もある中、「木の良さを伝えたい」「家に合った手作り製品の使いやすさ、ぬくもりを感じてほしい」と張り切る。