【醸し人】#1 丸永酒造場 杜氏・永原元春さん

技術力で出す「狙った味」

「酒所信州」。中信地区の酒蔵、ワイナリー(ワイン醸造所)を記者が巡り、杜氏(とうじ)や醸造責任者の酒造りに対するこだわりなどを聞く、毎月最終火曜日暮らし面の新企画「醸し人」。初回は、丸永酒造場(塩尻市広丘高出)の杜氏、永原元春さん(56)を紹介します。

日本酒「髙波」の銘柄で長く、地元の人たちを中心に親しまれている。永原さんはこの酒蔵の杜氏であると同時に、7代目の代表でもある。
「普段、晩酌などで飲んでもらう酒の味は不変。品評会などに出す酒は、入賞するために、毎年の傾向を探りながら、狙った味を出すようにしている」
今は亡き父・道正さんから、酒造りの役目を引き継いだ10年以上前から貫く姿勢。そのかいあって、多くの品評会で高い評価を得ている。
「狙った味が出せるのは技術力」と強調。酒造りの工程の中でも「こうじ造り」が重要といい、「力のあるこうじができれば、その後の発酵もスムーズに進む」と解説する。
こうした技術力を支えるのは日々のデータの蓄積と分析。かつては杜氏の勘と感覚を頼りに行われていた作業も、今はそれらを数値に置き換える。その上で勘と感覚を磨けば、さらにうまい酒を醸すことができる。
昨年3月から、県内では初めて、搾りたての原酒生酒を瞬間凍結した「髙波Frozen(フローズン)」の販売を開始。専用の冷凍機を使うことで酒の成分が均等に凍り、1年を通して新鮮な味と香りを楽しむことができるという。
「凍ったまま流通させる点で、課題はある」としながら、「シャーベット状で飲むと、口に含んだときの香りは未体験のもの。日本酒の新たな可能性」と力を込めた。

【沿革】
まるながしゅぞうじょう
 1871(明治4)年、広丘村高出(現塩尻市広丘高出)に創業。1935年ごろまでは「永楽正宗」の銘柄で販売していたが、商標権の問題が判明。以後、住所の「高出」の「髙」と、近くを流れる田川の白波から「波」の字を取り「※髙波」とした。

【永原さんおすすめこの1本】
髙波Frozen特別本醸造(720ミリリットル1760円、300ミリリットル880円)

【連絡先】
丸永酒造場TEL0263・52・2633