精神科医に聞く子どものゲーム依存

ゲームばかりしている、ネット動画ばかり見ている、約束の時間を守れない…親の困っている声を聞きます。生まれたときからIT機器が当たり前にある子どもたちと、保護者はどう付き合えばいいのでしょうか。中信地区で主に思春期の子どもを診療する精神科医の樋端(といばな)佑樹さん(45)に聞きました。

◆ゲームやネット動画をやめられないのはなぜか?
そもそも大人が忙しくて子育てに余裕がないこと、子ども同士が安全に遊べる場が少ないことが理由だと思います。ネット動画は子どもにとって刺激がとても強く、見せれば静かになり、スマホに子育てさせてしまうのです。大人が楽しそうにスマホを使う姿を見せれば、子どももやりたくなります。
スマホ、ゲーム機、パソコンのゲームは本当によくできています。目的、課題、報酬が現実世界よりもはっきりしていて、すぐにさまざまな快を与え、難しさとスキル上達のバランスが絶妙。飽きさせない仕掛けから、子どもも大人もやめられなくなります。
しかし、ゲームは使っている感覚のバランスが偏っていて(五感を使わず頭だけオーバーヒート状態、社会交流が少ないなど)、強い刺激への反応だけで続けている状態や、しんどい現実からの逃げ場になっている状態はよくありません。小学校低学年までは強過ぎる刺激から保護者が制限する必要が、高学年ぐらいからは自分でコントロールできるようになる必要があります。
◆時間の約束を守りたくするには?
ネット動画については、スマホを渡す前に、親のものを貸していることを確認し、使い方の取り決めをします。テレビに映すルールにすれば、どんな動画を見ているのか親も分かります。
ゲーム時間の約束は、親子で話し合ってお互いが納得する内容を決めましょう。遊ぶ時間、寝る時間、約束の期間、約束を守れなかった場合はどうするかを決めます。切りのいいところで終わらせたいというタイプのゲームもあります。親はまず、子どもがどんなゲームをしているのか、何が面白いのかを知ろうとしてください。できれば一緒にやってみましょう。
小さい子なら、興味を持って一緒にやってくれたことが楽しかったと満足できますし、思春期になると一緒にいることが居心地悪くて他のことに移るかもしれません。
親は子どもをいつまでもコントロールし続けることはできません。親と子が話し、互いに約束を守る練習をしましょう。

大人の向き合い方は

◆やめられない子とどう付き合えばいいか。
子どもがするゲームやネットの何が楽しく、満たされているのかを理解することから始めましょう。もし、現実がつらく、学校の勉強についていけない、しんどいことがあるなどの背景がある場合は、その対処が先です。
外来には、ゲームのやり過ぎと、不登校・引きこもり・発達障害の問題が組み合わさって相談に来るケースが多くなっています。学校でいじめられたり、発達障害があってコミュニケーションがうまくできなかったりして不登校になり、中間教室などへの送迎も親が忙しくてできない。学校もその子に合わせた環境調整ができていない。学校も家庭もしんどい子ほど、自由に簡単にいけるゲームの世界だけが居場所になってしまいがちです。
子どもに、大人が楽しそうにいろんなことをやって「ゲームも楽しいけれど、それ以外にも楽しいことがいっぱいあるかもよ」と伝えることです。ゲームやSNSはどんどん進化していますが、五感を使って体験することや、体を動かすとすっきりすること、じっくり対話したり考えたりする楽しさなどを伝えられるといいですね。
子どもたちにはいろんな体験をたくさんしておいてほしいです。大人がとかく考えがちな、社会や将来の役に立つかどうかはさておき、楽しくできる好きなこと、自分は楽にできちゃう得意なことを見つけておけば、それらを通じて仲間づくりや仕事につながり、楽しく生きられる大人になれると思います。

【プロフィル】
といばな・ゆうき 香川県生まれ。北海道大医学部を卒業後、JA長野厚生連佐久総合病院、同安曇総合病院(現・北アルプス医療センターあづみ病院)で研修、診療。現在はかとうメンタルクリニック(松本市北深志1)で子どもと大人の精神科の診療。「はみだしていこう、はぐれないでいこう」が診療テーマ。精神科専門医。信州大医学部子どものこころ発達医学教室特任助教。