
芸術家集い アイデア無限大
特別な日、場所ではなく、毎日音楽会、毎日文化祭を開いているような場所をつくりたい─。そんな思いを胸に、元中学校教員の鷲澤幸毅(こうき)さん(38)は安曇野市穂高有明の自宅を改装。5月21日、アーティストサロン「utanca(ウタンカ)」を開こうと準備を進めている。
活動しやすいようスタジオやホールを設け、ピアノを置いたり、配信機を設置したり。音楽教室、演奏会、映画上映…。結婚式、音楽葬といった使い方もできる。
安曇野を拠点にするアーティストは多いが、活動できる場が少ない、活動費が収益を上回る─。そんな声に応え、毎月一定額を払うサブスクリプションを取り入れる。アーティスト同士の交流、情報交換、コラボレーションなど、さまざまな化学反応が起きる場にしたい考えだ。
アート活動をもっと容易に
鷲澤幸毅さんのログハウスの自宅。壁をぶち抜く、天井を外すなどの作業をしているのは、鷲澤さんと教員時代の教え子やその家族だ。1階にはホールと大スタジオ、2階には中小のスタジオを設ける。1階にはグランドピアノ、2階にはアップライトピアノ2台を置く。各部屋にはスクリーン、簡易配信機を設置。1階にはコワーキングスペースも。オープン後は様子を見ながら家庭用のパイプオルガン、チェンバロを置く計画だ。
鷲澤さんはイタリアのフィレンツェに留学中、シェアの文化を体験した。「一つの場所を複数のアーティストが使うのは当たり前。演奏会や教室が開きやすいし、コストも抑えられる。アート活動が活発になる」。日本は活動しにくい。ならば、情報をシェアしたり、音楽教室を継続したり、発表の場の確保が容易だったり─というイタリアのいいところを持ち込もうと、模索が始まった。
鷲澤さんは帰国後の2020年、穂高有明に中古住宅を購入した。条件は▽音楽ができる▽芸術家が集まりやすい場所─。購入したのは、元の持ち主が音楽を聴くために建てた家だった。拠点は決まった。
音楽を奏でる人、絵を描く人、建物を造る人、パンを作る人。鷲澤さんのアーティストの定義は「創意工夫して何かを生み出す人」だ。彼ら・彼女らと話すと、アイデアがどんどん生まれる。
カフェや教室など挑戦する場にも
利用は月額1万円のサブスク形式で、予約で使えるようにする。場所代、物品の維持費、ピアノの調律代などのコストが込みなので、アーティストらの負担を減らし、収入増につながる。シェアカフェも考えており、音楽教室や店を持ちたい人が試しで挑戦する場にもする。Wi|Fi(ワイファイ)を設置、コワーキングスペースも確保した。
楽器はみんなで育てようと、新しいグランドピアノを購入。違うピアノにも触れてほしいと、グランドピアノの提供を呼びかける。「ストーリーのあるピアノを」と希望、思い出も受け継ぐ構えだ。改装を一緒に楽しむDIYボランティアも募集中。駐車場造りの礎石なども探している。
アーティスト同士の交流、情報のシェア、コラボレーション、結婚式、音楽葬|とアイデアは無限だ。お客を招いたピアノ教室など、過去にない環境も提供したいという。「毎日が本番のようになり、その経験から世界で活躍する人が出たらうれしい」と鷲澤さん。さまざまな可能性を秘めた「utanca」は5月21日に動き出す。
利用は午前10時~午後5時。今後、利用者の声を聞きながら拡大する。21日から小学生による「写真展」を予定。鷲澤さんTEL090・3525・3345