【記者兼農家のUターンto農】#99 チャットGPT

AIに稲作について聞くと

チャットGPTは農業に使えるのか-。
質問に自然な文章で答える対話型人工知能(AI)が話題だ。どう活用するべきか、賛否こもごもの議論で連日にぎわっているが、農業見習い中の身に役立つことはあるのか。
試しに「たくさんお米を収穫する方法」を尋ねた。画面に栽培法のポイントが列挙される。適切な品種選び、土壌管理、病害虫予防…。文章はうわさにたがわず滑らかだ。
では、「適切な品種」とは?長野県中部について質問を重ねると、今度もよどみなく例が挙がった。あきたこまち、ななつぼし…。あれっ、おなじみのが出てこない。
コシヒカリについて確かめると、「長野県中部では、一般的には適していないとされています」という。うちを含めて長野県で作られる米の7割を占める品種が不適切とされてしまった。収穫量だけを考えた結果かもしれないが、現実とはかけ離れている。
だが、「だから使えない」と切って捨てる気にはならなかった。
回答を読んで、もっと知りたいと思うことが出てくる。突っ込んで聞いた回答に、さらに疑問がわく。やりとりしているうちに自分の興味や関心が深まっていく感覚がある。「対話型」とはよく言ったものだ。チャットGPTを使うと考えなくなると懸念する声もあるが、そう単純でもない。
「栽培は地域の実情によるので地元の専門家に確かめるといい」とチャットGPTは言い添えた。言い訳がましいが、分かっているなとも思う。
確認相手は、私の場合、例えば父か。経験や知識に差がある上に口下手な父とは話がかみ合わないことも多いが、チャットGPTで聞くべきポイントが整理できれば、ましになりそうだ。
玉石混交とはいえ情報収集能力は絶大で、うわべだけとはいえ受け答えは誠実。チャットGPTは、暗黙知と素人の無知とをつなぐのに使えるところがある。