安曇野・松本に7店舗「きんじょの本棚」

本を読む人と知り合いたい。どんな本を読んでいるのか知りたい─。そんな思いから、きんじょうみゆき(金城美由紀)さん(53)が2018年、地元の東京都町田市で始めた「きんじょの本棚」。当初は4店だったが、現在は全国の約170店舗が看板を掲げる。
昨年5月には信州1号店が安曇野市に開店。店主の田村秀峯さん(41)の妻、典子さん(41)が、自宅で開くパワーストーンとナチュラルグッズの店「水晶の森」で始めた「きんじょの本棚水晶の森信州安曇野1号店」(穂高有明)だ。今年は同市、松本市に6店舗ができた。
どこで本を借りても、どこに返してもOK。本棚に置いた「貸出ノート」を通し、店主と借りた人の交流が生まれたり、本の情報を伝えたり。きんじょうさんの思いが受け継がれる。
「全国どこでも」貸し借りがOK
私設図書館「きんじょの本棚」。近所にあるだけでなく、発案者のブックコーディネーターきんじょうみゆき(金城美由紀)さんの名前にもかけて名付けた。場所は個人宅前だったり、カフェや美容室などの店だったり、寺院や教会、幼稚園だったり。活動が始まった町田市では、“街の本棚”があらゆる場所にある。
本をどこで借りても、どこで返してもいいというゆるい活動で、東京の本が沖縄にたどり着くこともある。読んだことのない本に出合うだけでなく、店主の推しの本を通して人柄を知ることもできる。感想を書く「貸出ノート」から高齢の店主と小学生の交流が生まれたり、返す本と一緒にサツマイモが届けられたり|など、心温まる副産物も生まれているという。
田村秀峯さんは「水晶の森信州安曇野1号店」の店主だ。「自分の好きな本を人に薦めるきっかけになる。本棚巡りで、他県の人と交流ができるのでは」と昨年5月に始めた。現在は約20冊を置く。
今年1月には、東京都武蔵野市でカフェの一角を借りて「きんじょの本棚」を営む田村さんの姉、美幸さん(45、同三鷹市)が安曇野を訪れ、普及活動をした。その効果が出て、店開きする所が出始めた。現在は安曇野、松本に7店ある。
「本は人を表す」と田村さん。「人を深く知るきっかけになる魅力的なサークル活動。簡単に始められ、友達、仲間づくりのツールになる」と力を込める。
オープンも簡単始めたい人募集
本棚をオープンするのも簡単だ。出す場所、店名を決め、やりたいことを田村さんに伝えればOK。スタート代は3千円で、ロゴデータ、シールデータが届く。本棚や店番、店名が入った看板を用意し、貸し出す本にシールを貼ると、いよいよ開店となる。
本棚、看板は段ボールでもよく、書籍だけでなく絵本、漫画、CDなどを置いてもいい。「楽しむこと、無理をしないこと、続けることを大切にしている」ときんじょうさん。「本が間に入ることで年齢、性別、職業などを超え、いい距離感でフラットにつながる」。トランクに本を詰め込み、出かけた場所で「出張きんじょの本棚」を開くことも。4月22~24日には、安曇野市に「本店」が出張した。
本離れが言われるが、ぺージをめくるわくわく感、独特のにおいなど、本の持つ魅力は計り知れない。田村さんは「町田市で開いた『きんじょの本棚まつり』には多くの人が訪れた。本棚巡りも面白い」と言い、「きんじょの本棚」が観光ツールの一つになるのではないかと期待する。始めたい人も募っている。
今年できた松本・安曇野のきんじょの本棚
お堀と青木カフェ店(旧青木医院、松本市城東2)
秀太郎工房店(安曇野市穂高有明)
ひつじ屋店(同穂高、JR穂高駅前)
ラーメン仙店(同穂高)
のらどこ店(松本市内移動販売)
ともしび店(松本市刈谷原町洞光寺本堂前)