
ことばは、剣にもなれば花にもなる-。元亀田屋酒造店社長でエッセイストの竹本祐子さん(68、松本市梓川倭)が4月、エッセー集『ことばの匂い』を幻冬舎(東京都渋谷区)から出版した。経営した酒蔵のこと、翻訳の仕事、好きな犬や猫の話題。それらを柱に、「生きていくうえで、本当に必要なものは何か」を問い続けながらつづった十数年間の集大成だ。
竹本さんは、MGプレスの前身である松本平タウン情報1面コラム「展望台」の執筆を1996年7月から2018年3月まで22年近く担当し、掲載されたコラムは計448本にのぼる。
タウン情報の終刊(18年)と酒造会社を事業譲渡し経営から退いた時期が重なった。「引退してぽっかり穴があいた感じ。何か書いていたい」との思いが募り、22年春、日本エッセイスト・クラブに入会する一方、これまで書いてきた文を本にしようと考えた。
2005年に最初のエッセー集『酒蔵と猫』(郷土出版社)を出版しており、その続編ともいえる。「展望台」に掲載した05年以降のコラムの中から87本を選定。文芸雑誌『文芸思潮』の22年度エッセイ賞に応募し佳作に入選した「シベリア鉄道の旅1974」(22年3月)や、MGプレスに寄稿した「洋の東西を問わない」(19年5月)など5本を加えている。
竹本さんは「一冊の本にしてみると、自分がやってきたことや、世の中の移り変わりが分かる。このエッセー集が、暮らしの中の『ひとつまみの塩』になればいい」と話す。
四六判、240ページ。1650円。