【記者兼農家のUターンto農】#101 リーフ初出荷

「平年並み」とはいかず…

実家で、主力作物のリーフレタスの出荷が始まった。初日は立夏の6日。平年並みだ。
ところが、すぐに平年にないことが起こった。9日の朝、遅れて畑に出ると、親たちの作業の手が鈍い。「霜だ」という。
緑の葉に白い氷の膜を載せたリーフの株があちこちにあった。触ると、カチコチだ。
そのまま株元を切って箱詰めすると、霜の所が変色するという。気温が上がって解けるのを待った。
冷水がまぶされたリーフを扱っていると、手がかじかんだ。暦の上では夏なのに。「こんなの初めてだ」と父。本当か分からないが、そうこぼしたくなる気持ちは分かった。
霜に遭った野菜は、甘みやうまみが増すものだ。野沢菜やホウレンソウが思い当たる。雪中キャベツも同じようなものだろう。
それなら、このリーフも?楽しみにして、朝食で食べたが、そうでもなかった。むしろ、ほどよく苦い。平年並みの味がした。
このゴールデンウイークは「4年ぶり」がよく聞かれた。行事の開催やにぎわいがコロナ前の状態に戻ってきたという。
コロナ禍で外食需要が減り、リーフの卸値が安くなったことが思い出された。今年は高値が期待できるのかと思ったが、連休明けの市況は昨年より安め。なかなかに苦いが、変動が激しいのが野菜の値の常。問題は、シーズンを通した実績だ。
個人的にはUターン後ずっとコロナ禍で、「平時」が待ち遠しかった。やっとだと晴れ晴れしたいが、この間に別の厄介事が持ち上がっている。物価高だ。肥料などあらゆる資材代が上がった。余計にリーフの高値に期待したいが、それで事足りるのだろうか。
初出荷で内股(うちもも)の筋肉痛が出たが、しばらくすれば体は慣れる。霜が付いたリーフも、解ければ何でもない。だが、物価高の「氷河期」は、時間では解決しそうにない。
Uターンした私だけでなく、平年にない学びが求められるシーズンになりそうだ。