
2018年4月18日付のMGプレス創刊号1面で紹介した「山蚕(やまこ)プロジェクト」。“繊維のダイヤモンド”と呼ばれる安曇野市の特産、天蚕(ヤママユガ)を後世に伝えるための、染織家や天蚕飼育家らの活動だ。あれから約5年。天蚕の商品などを展示する同プロジェクト初のイベントが、松本市大手3のギャラリーノイエで開かれている。
山蚕プロジェクトは17年、染織家の本郷孝文さん(78、松本市清水)、安曇野市穂高有明の天蚕飼育家、古田清さん(77)、春江さん(75)夫妻らで結成。稀少で高価なイメージの「総天蚕」の商品を、気軽に使ってもらおうと、古田さん夫妻が収穫した天蚕糸で、本郷さんがショールを織り、販路を模索した。
20年には、しおりを製作し、本郷さんが京都市に住む知人にプレゼントした。知人が同市内の書店などに紹介したことから、販売が決定。興味を持った京都新聞社の記者が取材し、紙面で天蚕の特集を組んだ。
だが、松本、安曇野市など地元では、天蚕が「知られているようで、実は知られていない」(本郷さん)のが実情。何よりの課題は後継者の育成だ。
31日まで開かれているイベント「私たちの天蚕ものがたり」は、多くの人たちに天蚕の魅力を知ってもらうのが一番の目的だ。本郷さんは天蚕糸100%の着物や帯地などを展示。古田さん夫妻は、着物1着を作るのに必要な繭3千個や生糸などのほか、天蚕の幼虫も展示した。「期間中に繭作りをしてくれたら」と期待する。
24日は古田さん夫妻と信州大人文学部の金井直教授、30日は本郷さんと京都新聞の行司千絵記者が対談する(ともに午後5時から)。
古田春江さんは「最初で最後のイベントかも。とにかく知ってほしい」と願い、本郷さんは「天蚕文化は『なくしてはいけないもの』です」と、しみじみと語った。
本郷織物研究所TEL0263・32・5511