
見る人の感性で楽しむ演劇
どきどき、わくわく、不思議な演劇…。こんな言葉が似合いそうだ。まつもと市民芸術館(松本市深志3)を拠点とする劇団TCアルプの元俳優8人が、新たに劇団「シアターランポン」を立ち上げた。
目指すのは子どもから大人まで、それぞれの感性で楽しめる演劇。劇場にこだわらず、さまざまな場所へ出かけるアウトリーチ企画から始める。
初企画のタイトルは「カメレオンの陽気なキャラバン」。場所によって色を変えるカメレオンを役者になぞらえ、見た人に演劇の面白さを探したり見つけたりしてもらうイメージという。6月16~18日、同館4階のスタジオ2で上演する。
旗揚げ公演に向けメンバー全員で物語を創作中。松本発「これぞ僕らの芝居!」へと動き出した。
意見をぶつけ「僕らの芝居」を
「一向に鬼の元にたどり着けない、いや、たどり着く気がない桃太郎」「焼き魚が骨になってしまっても海に帰ろうとする話」「夜中の郵便局で起こる奇跡の話」…。メンバーが持ち寄るアイデアの一例だ。
体を動かして表現したり、ショートストーリーとして発表したり。これらの話が採用になるかは未定だが「意見がぶつかりあった先に何が見えてくるか、とても期待しています」と、劇団シアターランポンの代表・武居卓さん(37)。
メンバーは草光純太さん(46)、細川貴司さん(41)、下地尚子さん(33)、深沢豊さん(47)、荒井正樹さん(41)、加賀凪さん(30)、堀田康平さん(33)。松本に来て16年目の武居さんと細川さんをはじめ8人中5人が県外から移住し、元まつもと市民芸術館総監督で演出家・俳優の串田和美さん(80)と演劇に取り組んできた。
松本で暮らし演劇続けたい
昨年末にTCアルプを退団した8人は、それぞれが一度立ち止まり、今後の俳優活動について考えたという。演劇を続けるか、出身地に戻るか悩んだメンバーもいた。だが「自分を育ててくれたのが松本。この街に暮らしながら演劇をつくっていきたい気持ちが再燃した」と武居さん。同じ志のメンバーが集まり、新劇団を結成した。
劇団名「シアターランポン」は、松本で生まれた演劇の明かりをランプにともし、明かりに集った俳優たちと新たな世界に挑戦し歩んでいく決意などを込めた。
9日から始まった稽古は白熱し、アイデアを練りながら時には大笑いしたり、時には激しく意見を対立させたり。手作りする塗り絵型のチラシ図案にも「メンバーは言いたい放題。でも、一つ一つをみんなで考え、変化させながら芝居ができていくのが楽しい」とチラシデザインを担当した下地さん。
TCアルプや市民劇団など、さまざまな劇団が個性豊かな演劇をつくる松本の街。細川さんは「『松本にはいろいろな演劇がある』と楽しんでもらえるような活動をし、今まで応援してくれた街の人々に恩返しをしていきたい」と話す。
アウトリーチ公演は入場に年齢制限を設けず、演劇に抱きがちな難しく堅苦しいイメージを払拭したいという。武居さんは「いろいろな意味でとんでもないものが生まれそう。でもこれこそが『僕らの芝居』。どきどきしながらお披露目します」。
◇
公演は16日午後7時、17日午後1時、5時、18日午後2時。チケットは一般2千円、高校生以下千円、未就学児無料。チラシ(同館などにある)に塗り絵をして持参した人は100円引き。ホームページから予約が必要。問い合わせは劇団のメールcontact@lampon.info