古い車に注ぐ小堺さんの情熱 夢は旧車で焼き芋販売

「車が大好き!」。小堺健司さん(50、安曇野市穂高有明)は、そんな少年の心を持ち続ける。アナログな古い車に愛着を感じ、愛車は55年前のトラックや60年前のスクーターなど。今ではなかなかお目にかかれない貴重なものだ。
小堺さんの夢は、古い車で商売をすること。焼き芋の移動販売を計画しており、トラックを改装中だ。ミニカーの焼き芋屋とそっくりに仕上げるというユニークな構想だ。
所有するミニカーと同じ車種を手に入れ、同じ色に塗装し、荷台に販売スペースを作っている。車の整備に長年携わった技術を生かし「秋に間に合わせたい」と作業を進める。
「手をかければかけただけ応えてくれる」のが旧車の魅力。素朴な姿がいとおしい。

小堺健司さんが改造しているのは、1973年製のトヨタのハイエース。小坂さんと同い年だ。見本は、トミカのミニカー「ハイエースの石焼きいも」。モデルになった車をと、初代のハイエースを手に入れた。今は分解し、ハンドルやインパネがない、シートや荷台も外されている-など、無い無い尽くしだが、「同じようにしたい」と、一から手がけている。

子どもの頃から車好き。18歳で免許を取得。父の影響もあり、64年製のフォルクスワーゲンを手に入れた。20歳で車の板金塗装整備の業界に入り、38歳で友人と二人で独立、安曇野市堀金烏川に同様の会社を立ち上げた。
「今の車に興味がなくなった」。コンピューター制御されている車は、どうも性に合わない。昭和レトロが好きで、車もアナログに心を引かれる。古い車で商売をしたいという気持ちもあり、47歳で会社を辞めた。

落ち葉で焼いた芋を近所の人にお裾分けし、喜んでもらえたのが焼き芋をやるきっかけだ。ミニカーの「石焼きいも」を思い出し、同じ車種、初代ハイエースのトラックをネットで探し始めた。ワンボックスはよく出るが、トラックはなかなか見つからなかった。「スポーツカーやセダンタイプは大事にされ残りやすいが、トラックは商用車として酷使され、廃車になることが多く、残っていること自体が珍しい」と小堺さん。3カ月かけてようやく見つけた。
現在の愛車はボンネット型トラック「トヨペット・スタウト」(65年製)、「ボルボ」(93年製)。そして、鉄のスクーターと呼ばれる「ラビット」(63年製)だ。「スタウト」は当時の色、水色が退色し、部分的に赤くなっているが、あえて塗装はしない。「できるだけ当時のまま、オリジナルが一番落ち着く」
高級感あるクラシックカーとは異なり、泥臭く素朴な旧車がいいという。「現代車にない独特のスタイルで頑丈。今も負けないよう頑張っている」とその魅力を話す。
子どもの頃の「車が好き」という思いを持ったまま大人になった。自身のことを「大人の姿をした子ども。自由人、自遊人」と称する。仲間も多く、車の話を始めたら時間を忘れる。インスタグラムにはフォロワーが約3千人。毎年、大王わさび農場(安曇野市穂高)に旧車が集う「わびさびオールドカーズミーティング」を主催する。
旧車を改造し、自宅の庭でカフェを開くのが夢だ。「散歩する人、自転車やバイクに乗る人の利用を。故障のサポートもしたい」。好きを生かし、旧車や物作りの魅力を発信したいという。