味守り新技術も歴史つなぐ
「五一わいん」の銘柄で知られる林農園(塩尻市宗賀)。創業100年を超え、昭和初期には現在の国内主要品種メルローの栽培を県内で初めて手がけるなど、業界のトップランナーだ。入社以来22年間、製造畑を歩んできた製造部長の添川一寛さん(46)は、「新しい技術にトライしながら味を守り、歴史をつなぎたい」と力を込める。
年間約560キロリットルを製造し銘柄は約60品目。メーカーとして品質の安定が第一で、ワインに悪影響を与える微生物の働きや香り成分を抑えられるーと、約10年前から世界で注目される新技術「コイノキュレーション」に挑戦することを提案した。
通常は段階的に行うアルコール発酵とマロラクティック発酵を同時進行させることで醸造期間を短縮。効率的でエネルギーコストの削減などにも一役買う醸造方法という。
各地のワイナリー見学やワイン会などに積極的に参加し、同業者や飲み手と交流。情報を得たり、消費者の嗜好(しこう)など時代の流行を知ったりしてワイン造りに生かしている。
福島県出身。山梨大でワイン醸造を学び同社に就職。以来、温暖化や栽培品種の変化など産地を見詰め続ける。「塩尻桔梗ケ原はブドウ畑が広がる風光明媚(めいび)な土地。この風景を守るため、いいワインを造るのが使命」と誓う。
契約農家から仕入れたブドウで醸した「塩尻メルロ2021」は、豊かな果実味とまろやかな樽香(たるこう)が特長。21年は雨で苦労した年だが、醸造で挽回したという思い出がある。
「その年を思い出しながら飲むことができるのもビンテージ(醸造年)を刻むワインならでは」。タンニンが穏やかなので暑くなるこれからの季節にもお薦めの赤ワインだ。
【沿革】
はやしのうえん 1911(明治44)年、塩尻市宗賀で創業者林五一さん(故人)が果樹栽培を開始。19年にワイン醸造を、翌年には甘味果実酒とブランデーの製造を開始。51年、山形県からメルローの枝を持ち帰り桔梗ケ原で栽培。75年、「五一わいん」の商標で販売開始・87年、個人経営から法人化。本社隣接と同市柿沢などに計14ヘクタールの自社農場がある。契約農家は約100軒。
【添川さんおすすめの1本】
塩尻メルロ2021(720ミリリットル1760円)
【相性のいい料理】
ハンバーグ、焼き肉、根菜類の煮物など
【連絡先】
林農園TEL0263・52・0059