
塩尻駅構内のワインバーで働く金子さんと丸山さん
農業をやってみたい―と昨春、東京から塩尻市に移住し、飲食店で働きながら今年、農産物の生産から加工、提供までの一歩を踏み出したカップルがいる。今月、開店して1年がたったJR塩尻駅構内のワインバー「アイマニSHIOJIRI」の金子拓海さん(25、宗賀)と丸山菜月さん(22、同)。気負わず自然体で歩んでいる。
烏骨鶏飼い店で卵料理提供
金子さんは東京都多摩市の出身。大学で福祉を学んだが、飲食店の厨房で働くうちに、その面白さに取りつかれた。小さい頃から自然に親しみ、田舎暮らしにも興味があったことから、「自分で農産物を育てて加工し、料理として出すところまでやってみたい」と思うようになった。
中でも果物を栽培してみたいと、山梨や長野県を候補に見学。受け入れ先との縁が決め手となり、塩尻への移住を決めた。金子さんと付き合って6年になる丸山さんは、山形県出身。都会に憧れて上京したため反対したが、金子さんの熱意に折れ、一緒に移り住んだ。
昨年はナガイモやブドウの農家を手伝いつつ、「アイマニ―」開業時のスタッフ募集に二人で応募。丸山さんはホールスタッフで主に夕方から働く。金子さんは志を買われて役員に抜てきされ、店の運営やメニュー開発などを任されている。
今春、念願の畑を借り、知り合いから譲り受けた烏骨鶏約40羽を、自作した鶏小屋で飼う。小ぶりな卵も採れ始め、ひき肉で包んで揚げる「スコッチエッグ」にして店で提供(数量限定)し、好評という。
野菜は、店の料理に使えるよう、ハラペーニョ(青唐辛子)やイタリアントマト、ジャガイモなどを植えたばかり。夏には収穫できる見込みだ。
「“スローライフ”を想像していたが、とにかく時間が早く過ぎ、忙しかった」と、この1年を振り返る金子さん。丸山さんは「(塩尻に)来て正解だった」。都会にはない、人とのつながりの濃さも新鮮という。
「アイマニ―」は塩尻特産のワインの広がりを目指し、地元ワイナリーなどの生産者と、消費者とをつなぐ場―をうたう。「どんな思いで生産し、提供しているかのストーリーも含め、店の魅力として伝えていけたら」と金子さん。野菜や鶏を育てる二人も、その物語に登場しそうだ。