木曽路の魅力を手描きの地図で

企画展にウオーキングマップ展示 蓑島悦子さん 木曽町福島

「木曽路へようこそおいでくださいました」。この言葉で始まる手描きのウオーキングマップ。岐阜県中津川市の馬籠から木曽11宿を通り塩尻市の桜沢まで、江戸時代の中山道が記されている。
描き手は木曽町福島の蓑島悦子さん(84)。1987年から22年間、地元の観光案内所に勤め、自ら木曽路を歩いて地図を作り観光客に配っていた。
丁寧な文字とイラストで、見どころや土地の由来、距離などを詳しく説明。旅人をもてなす温かな気持ちがあふれている。
木曽観光連盟発行の「信州木曽路中山道を歩く」の基にもなった。福島関所資料館の土蔵ギャラリーで開催中の企画展「ウォークマップで見る木曽路─ホントに歩く中山道─」で展示されている。

木曽路自ら歩き絵や説明丁寧に

福島関所資料館(木曽町)の土蔵ギャラリーで、企画展「ウォークマップで見る木曽路 ─ ホントに歩く中山道 ─ 」が開催中だ。風人社(東京都)が発行する同名のマップとコースガイドのうち、木曽11宿の馬籠宿から贄川宿までをつなげて展示。江戸時代の資料や、現在、使われているガイド冊子と共に紹介している。
その一角に、蓑島悦子さんが作った小冊子がある。「福島宿より南へ妻籠宿まで」「妻籠宿より馬籠峠を越えて馬籠宿から新茶屋まで」「木曽福島より桜沢まで」の3編。1冊10ページ前後で、距離や目印、史跡の説明や眺望ポイントなども記されている。
「自分が知りたいことを調べて趣味で書いただけ。展示されて恐縮です」と蓑島さん。担当学芸員の伊藤幸穂さん(48)は「出版社のウォークマップと住民目線で作った地図を併せて見てもらい、それぞれの良さを発見してもらえれば」。企画展は、マップをきっかけに木曽路の魅力を知ってもらう狙い。蓑島さんの冊子は、地元で最初に手がけた貴重な資料として展示した。

旅人もてなす温かな気持ち

蓑島さんは生まれ育ちが木曽町福島。地元のバス会社に就職し、車掌や観光バスガイドなどを経て結婚退職。子育てが一段落した1987年、地元の観光案内所で働き始めた。
当時は「木曽路ブーム」で大勢の観光客が訪れ、観光案内所は中山道の歩き方を聞く人でにぎわったという。まだマップはなかった。蓑島さんは「大好きなこの町に来てくれた人を案内したい」と、自分で作ろうと思い立った。
ガイド本などを参考に現地に行って歩きながら調査。道なき道を雑草をかき分け進んだ先に、中山道が広がるなど、発見の感動も多かったという。
バスガイド時代の知識を生かし、地図に落とし込んで記した。完成品を自宅でコピーし案内所で渡すと、観光客から「この地図のおかげで木曽路を歩けた」と感謝された。逆に観光客から教えられることもあり、その都度、描き直した。
22年間勤務し70歳で退職。その後、木曽観光連盟が蓑島さんの手描きマップを基に、木曽路の北端から南端までを記した46ページのガイド冊子「信州木曽路中山道を歩く」を発行。今年第7版となった。
現在は自宅でのんびり暮らす。案内所に勤めていた頃、日本の街道を踏破する何人もの旅人から「木曽路が一番良かった」と言われたのが誇りだ。「これを機に中山道歩きに興味を持ってもらい、木曽の山川を見ながら美しさを堪能してもらえれば」とほほ笑む。
企画展は12月3日まで。午前8時半~午後4時半。福島関所資料館への入場料(一般300円、小中学生150円、町民無料)で観覧できる。会期中無休。問い合わせは町教育委員会TEL0264・23・2070