【ブドウ畑に吹く風~記者のワイン造り体験記】#4 雨との闘い

病気や虫防除作業が大切

かわいい新芽が出始めてから1カ月。ガクファーム&ワイナリー(松本市笹賀)の垣根仕立てのブドウ畑では、ワイヤ内にきちんと誘引された新梢(しんしょう)が太陽を求めるようにぐんぐん伸び、背丈ほどに達するものも出てきた。ブドウの成長は目覚ましく、その鮮やかな緑と生命力に圧倒される。
新梢には、ゆくゆくブドウの房となる「花穂」が幾つも付き、早い品種では開花したものも。そして、開花と同時期にやって来るのが梅雨の季節。ブドウ農家が生育に気をとがらせるシーズンだ。
ブドウは雨に弱く、雨は大敵ともいえる。ブドウの病気の多くは雨や水滴で飛散した病原菌によって発病するからだ。
代表的な病気は、葉に病斑やカビが発生するベト病、灰カビ病、ブドウの収穫直前に現れる晩腐(おそぐされ)病など。病気は一度かかると治らず、木全体を侵し、その年の収穫がなくなる事態にもなりかねない。対抗策は予防しかない。このため農家はこの時期、防除作業に追われる。
土地の生態系やテロワール(その土地の気候、地理、土壌などによる個性)を強く意識するオーナーの古林利明さんは「できるだけ減農薬で」との姿勢。雨よけの設置で、散布する薬剤の量を減らす努力をしている。
しかし、高温多湿な日本で、ワイン造りには農薬は欠かせないというのがワイン業界の通念で、古林さんも同意見だ。
病気に加え、葉や木の内部を食べる虫(コガネムシ、コウモリガやブドウトラカミキリなど)も大きな脅威となる。古林さんの畑も、奈良井川の土手に接した立地上、やぶから虫が来て木が駄目になったこともある。
おいしく高品質なブドウを収穫するという目標達成のための、さまざまな努力の一つが防除作業なのだ。

【メモ・ワインイベント】
信州ワインサミット23日~7月3日(平日午後5~9時、土日は午前11時~)、松本市中央1の花時計公園で4年ぶりに開催。県内約50ワイナリー140銘柄の多彩なワインをソムリエのアドバイスで楽しめる。フードや音楽も充実。