和を大切に米の味生かす
安曇野市唯一の酒蔵・EH酒造(豊科高家)。長く愛されるメインブランド「酔園」の他、純米大吟醸「どん蔵」など4ブランドを醸す。杜氏(とうじ)の鈴木達也さん(57)を中心に、蔵人が力を合わせた結晶だ。
米農家の鈴木さん。29歳の時から冬場の仕事として酒造りに関わり、2年前、同蔵の杜氏になった。商品の中には自身がアイガモ農法で栽培した酒米を使って仕込んだ「酔園逢醸(あいがも)」もあり、酒造りだけでなく、米作りへの思いも強い。
酒造りの工程の中で、こうじ造りには気を配る。酒を傷ませないよう、清潔を保つのはもちろん、自身や蔵人の体調までしっかりと管理する。
同じ品種の米でも毎年、出来が異なるため、蔵人とのコミュニケーションは欠かせない。「和を大切にしている」と強調する。
「酒造りは生き物相手。微生物が酒を造ってくれる。管理ではなく見守ることが大切。杜氏は見守り隊長です」。信州大農学部で微生物を勉強した鈴木さんならではのこだわりだ。
1973年から販売する「酔園幻の酒」は、増醸酒が主流だった当時、他社に先駆け、品質重視で造った純米吟醸酒。北アルプスの伏流水を使っており、口当たりが軟らかい。米のうま味を生かしながらもすっきりとした味わいで、食中酒にもぴったりという。
兵庫県産の酒米・山田錦を精米歩合30%まで磨いた純米大吟醸「どん蔵」、大吟醸原酒「鬼かん」は、どちらもモンドセレクション最高金賞の連続受賞(どん蔵9年、鬼かん13年)を継続中。─を意味する「和醸良酒(わじょうりょうしゅ)」。この精神が脈々と受け継がれている。
【沿革】
イーエイチしゅぞう 江戸から明治時代に酒造りを始めた亀屋酒造店(現松本市梓川倭)、飯野屋(同安曇野市豊科高家)、務台酒造店(同安曇野市三郷温)の3蔵が1961年合併し、「酔園銘醸」を設立。2002年、ExcelHuman(エクセルヒューマン)の出資で現在の社名に変更。同時に、これまでの酒蔵のイメージを払しょくし、新しい設備を備えた新社屋が完成する。酒蔵見学も行っている。
【鈴木さんおすすめ この1本】
「酔園逢醸」純米吟醸原酒(720ミリリットル1870円、1・8リットル3960円)
【相性のいい料理】
すき焼き、ウナギのかば焼き、こいこくなど
【連絡先】
EH酒造TEL0263・72・3011