「片丘ワイン振興協議会」始動 ワインと景観 魅力アピール

松本平や北ア 景観とセットで

片丘ワイン? 知らないね─。そんな現状を変えたいと、塩尻市北東部の一画で「片丘ワイン振興協議会」が活動を始めた。
同市片丘地区では近年、ワイン用ブドウの栽培が盛んだ。2010年代後半、大手や個人の3ワイナリーが片丘産を前面に出したワインを造り始め、フランスの品評会で受賞する銘柄も出た。ブドウ生産者も増えている。
その機運を育てようと、同協議会が4月に設立された。
まずは知名度を上げたいが、「ワインだけではイメージしにくい」と小松千万蔵会長(80)。そこで期待がかかるのが、畑や地域からの眺望だ。松本平が見渡せ、その先に北アルプスを望む。「景観を生かして片丘を知っていただこうと」
片丘? ワインも眺めもいいよね─。そう語られる未来像を描く。

ワインと夜景 イベント企画

6月28日、塩尻市片丘にある農産物直売所の駐車場にテントが設営された。立て看板にいわく「ワインと焼肉で夜景を見る会」。片丘ワイン振興協議会が発足後、初めて催すイベントだ。
宵の口、60人ほどが集まった。ワイナリーの従業員やブドウ生産者、地域の人に加え、来賓として同市の副市長、商工会議所会頭、観光協会会長らが顔をそろえた。
協議会の小松千万蔵会長はあいさつで、「片丘全体にブドウ栽培が広がり、40ヘクタールになった。ワインだけではなく、眺めもよくて、槍ケ岳が見える所もある。ワインと景観のセットなら、片丘が違った形で映るのでは。塩尻市全体の観光にも、少しでも寄与したい」と力を込めた。
会場は市道東山山麓線とブドウ畑に挟まれた所。日が暮れると、眼下に塩尻や松本の市街地の明かりが広がる。それを眺めながら、参加者たちは片丘ワインや地元産の肉や野菜を楽しみ、話に花を咲かせた。

広がりに期待し本格的な活動へ

塩尻市でワインといえば桔梗(ききょう)ケ原だが、片丘はその東。高ボッチの裾野を上がって標高700~800メートルに、西向き斜面が広がる。野菜の作り手が減り、ブドウが植えられる畑が増えている。
「風が強い、雨がたまに降る。そして眺めがいい」と語るのは、当地に畑を持つワイン大手メルシャンの高瀬秀樹・桔梗ケ原ワイナリー長(43)。協議会では副会長を務める。「植樹に来ると眺めに感動する。会社では山麓線がワイン街道になればいいという話もある」と夢を語る。
協議会メンバーには、同社の勝沼ワイナリー(山梨県)で醸造責任者を務めた味村興成さん(65)もいる。片丘でワイナリー「ドメーヌ・コーセイ」を設立し、一昨年にはフランスの品評会「ボルドー酒チャレンジ」で最高賞のプラチナ賞に次ぐ金賞を受賞した。
農業経験がないところからワイナリー開業まで果たしたのは、幸西(こうにし)義治さん(65)。「丘の上幸西ワイナリー」の周りには、同じように同市の「塩尻ワイン大学」で受講した人が作るワイン畑が増えているという。
多士済々の未来を照らすように、「夜景を見る会」の終盤、打ち上げ花火が夜空を彩った。「これだけじゃもったいない」と参加者の1人。現在ワイナリーは3カ所だが、今後増える可能性もある。協議会の本格活動の具体化はこれから。単発に終わらないよう、知恵を絞り、醸す努力が始まる。