アウトドアガイド「だいじ屋」 自然や人の温かさ 奈川の魅力発信

人間らしい生活がここにある

松本市奈川の関谷健司さん(41、東京都出身)は5月、奈川の自然の中でさまざまな体験をガイドする「だいじ屋」を始めた。
手つかずの自然が残る奈川地区。人の温かさや、自然の恩恵を楽しみながらの生活。「観光だけでは分からない魅力を、地域の人たちと手を組み、行政にも協力してもらいながら発信したい」
便利な都会での生活、お金で賄える生活は「生きている感じがしなかった」。たどり着いた奈川での生活は「人間力が付く」。人が支え合って生きる、余った物を自然に分け与える。そんな暮らしを見て「自分たちもそうありたい。親が子どもに見せていくように、お客さんにも自然を楽しみながら大事なことを伝えたい」。そう話す関谷さん家族を訪ねた。

アウトドア通じ幸せな気持ちを

学生時代、ヒッチハイクで旅を楽しんでいた関谷健司さん。卒業後は、大きな企業で営業職に就いた。その生活にいつもあった「違和感」。責任ある役職に就いてからも違和感は消えず、内に秘めながらサラリーマン生活をしていた。
「生きている感じがしない」と26歳で退職。そのまま行けば将来が安泰なのに…と周りの人に反対されたが、思いは変わらなかった。海外へ2年、国内を1年半ほど旅をした。「今思うと、可能性を探して旅に出たんだと思う」
海外での2年で人生観が大きく変わった。不思議な体験をたくさんした。ある気持ちの良い日に住宅街を歩いていて、「幸せな気持ちになり、ただただ涙が出てきた」。その体験が今も胸にある。アウトドアの生活を通じて、みんなにもその気持ちを味わってもらいたい。それが自分の幸せにもつながる、と考えている。
帰国した関谷さんは、31歳で上高地や乗鞍高原のガイドを始めた。冬は松本、夏は岐阜県郡上(ぐじょう)市と2拠点でガイドの生活をする中で、妻の野枝さん(34)と出会った。34歳で結婚。子育てをするのに2拠点生活は難しいと考え、定住先を奈川に決めた。
いずれ宿泊業をしたいと考え、まずは世界観を広げ探究しようとガイドの世界に飛び込んだ。だが、想像以上に奥が深くて広い。ガイドの仕事は人を幸せにし、人間力を付ける教育ができると実感。派手な観光地ではないが、地元の人が大事に守ってきた豊かな自然。多くの魅力を抱えながらガイド不在の奈川をフィールドにする「だいじ屋」を始めた。

奈川の春夏秋冬楽しめるツアー

奈川は、一番近くのコンビニでも車で40分かかり、便利とはいえない。だが、大変なことが多い生活の中にこそ、工夫が生まれる。「僕たちにとって人間らしい生活がある」と話す。
勉強は学校で教えてもらえるが、何が大切かを教えるのは親だ。「子どもに自然の中で支え合って暮らす姿を見せていくことが大切。お客さんにもそんな話をしながら奈川を案内している」
5月に開業しただいじ屋では、春は新緑の野麦峠トレッキングや山菜狩り、渓流釣り。夏は沢遊び、シャワークライミング。秋はきのこ狩りやトレッキング。冬は野麦峠スキー場の稜線(りょうせん)をスノーシューで歩く。奈川を満喫できるツアーを企画している。「一人一人のやりたいことを大事に、体力に気を配りながら、誰でも安心して楽しめるツアーを行ってます」
だいじ屋のウェブサイトはこちら。TEL080・3939・0987