人との縁 家族写真大切に

フォトグラファー・映像ディレクター 横澤裕紀さん

フォトグラファー・映像ディレクターの横澤裕紀さん(29、松本市清水1)は、フリーランスとして活動し4年目。持ち前のコミュニケーション力で家族や工芸作家、建築物などさまざま被写体に迫り、生き生きとした表情を引き出す。その力で、自身の道も切り開いてきた。

その人らしさにじむ写真

横澤さんが撮ったポートレートや家族などは、かっちりとしたものだけでなく、日常のありのままの様子を写したカットが多い。その人らしさがにじみ出た、ほっこりするような写真だ。
「親子の写真を撮るとき、照明などいろんな設定は僕がやり、シャッターはお父さんやお母さんに切ってもらうこともある」と横澤さん。「僕に向けた笑顔じゃなくて、親に向けた笑顔を撮りたい。全然違いますからね」

横澤さんの社会人としての歩みは、塩尻市の田川高校を卒業後に、同市の大門商店街の空き家を活用した交流スペース「nanoda」の管理人になったところから始まる。ナノダの企画者は、高校時代に知り合い、交流を続けていた市職員。進路を定められないまま浪人生活をしていた横澤さんに、声がかかった。
ここで経験した子どもや親との触れ合いを通して、横澤さんの中に「子どもの幸せにつながる活動がしたい」という1本の軸ができた。その後、松本市職員を経て結婚式場のスタッフに。しばらく働くと、式場が業務を委託する映像制作スタッフから声をかけられ、映像の編集者になった。2019年、25歳の春だった。
ところが、年が明けると新型コロナの影響で、仕事はゼロに。八百屋でアルバイトをしていたところ、救いの手が差し伸べられる。手仕事の魅力を伝える松本市の毎年恒例の催し「工芸の五月」を運営する企画室の知人から、声がかかった。
コロナによるイベント中止を受け、企画室は職人やギャラリー経営者のインタビュー動画「工芸通信」の配信を計画。横澤さんはその編集・ディレクターを任され、21年から撮影も担う。この仕事をきっかけにフリーに。知人から写真撮影を頼まれるようになり、今は3歳の長男を育てながら、県内外を飛び回る。
「ずっと大切にしていきたい」と言う仕事は家族写真。「家族にしか価値のないものかもしれないけど、だからこそ最も価値があると感じています」