
母親が悩み語り合う大切さ
「おむつ何サイズですか?」「離乳食で好き嫌いがあって食べてくれないの」
1歳未満の子を持つ母親同士が、抱えた悩みを語り合う。3日、松本市の松南地区公民館「なんなんひろば」で開かれた「スピカと灯(あか)り」は、ママと赤ちゃんのためのイベントだ。
松本市の助産院スピカ(村井町北)代表で助産師の伊藤佳奈さん(39)と、キャンドル工房「コトブキロケッツ」(寿豊丘)を営む園原かおりさん(39)が企画した。2人は松本蟻ケ崎高校の同窓生で、社会人になって再会した。伊藤さんは2児、園原さんは3児の母。現代の育児の課題や悩みを語り合い、意気投合した。
「少しでもママと赤ちゃんが楽しい時間を過ごす、お手伝いができれば」とイベント開催に踏み切った。
「スピカと灯り」イベント好評
伊藤佳奈さん、園原かおりさんが企画したイベント「スピカと灯り」は、子育て中の母親向けのイベント。自分の時間を楽しむ大切さを実感するとともに、子育てを経験してきた先輩や、同世代の参加者と、小さな悩みや不安について、率直に話せる場をつくることが狙いだ。
5月に初めて開くと好評で、2回目から「スピカと灯り」の名前にした。
3日は1歳までの子を持つ親子4組が参加した。母親たちは、園原さんが講師を務めるアロマワックスを使ったサシェ作りのワークショップ(WS)を通して交流。その間、別室で助産師の伊藤さんが子どもたちの面倒を見た。
滝澤夏南さん(29、村井町北)は帆孝ちゃん(6カ月)と参加。結婚を機に松本市に越してきたため、気軽に相談できる友達がおらず、ネット情報などが頼りだった。「普段は24時間子どもと一緒。ささいなことで不安になるが、同じ月齢の子の様子が分かったり、安心して預けて自分の時間がとれることがうれしい」と話した。
伊藤さんは昨年、助産院を開院。新生児訪問をすると、訪問先の母親から、子育ての心配事を相談できる人がいない、赤ちゃんを預けて自分の時間をつくることに罪悪感がある|などの悩みを持つ母親が多い現状が見えてきた。
一方、園原さん自身も「母親である自分がやらなきゃ」と感じていたり、人に頼みにくかったりと、育児を1人で背負い込み、体調を崩した経験があった。
「ママたちには笑顔でいてほしい。自分ができることをやっていけたら」。子育てに対する2人の共通の問題意識が、イベントにつながった。
伊藤さんによると、以前は小さい子どもを連れて外で遊んだり、妊婦健診などで母親同士のコミュニケーションを取れたりと、同じ境遇の母親同士の悩みや不安を話す場があった。市も子育て支援に力は入れているものの、コロナ禍で外出機会が減り、家の中で言葉が話せない子どもと2人きりで「孤独な育児」をしている人もいるという。
人と会えない環境で、分からないことがあればネットで調べる。ネットは情報量が多く、心配事もどんどん増える。ネガティブになりやすく、産後うつになってしまうケースも少なくない。「何気ない会話でも、人と話すことがいかに大切か」と伊藤さん。
園原さんも「自分の時間の確保は子育ての視野が広がり、相乗効果にもなると思う。そんな考えが広がってくれたら」と期待する。
次回の開催は秋を予定。インスタグラムで告知する計画だ。