
11月30日まで大町の本通り商店街
「世紀の大工事」として語り継がれる黒部ダム(富山県)の完成から60周年。建設基地だった大町市で、数々の記念イベントが開かれている。
その一つが、市街地の本通り商店街で11月30日まで開催中の「くろよん60 市街地シャッターアート」(市プロモーション委員会主催)だ。空き店舗などのシャッターを活用し、市内外の五つの団体・個人による黒部ダムにちなんだ七つのアート作品を展示。60年の節目に街に彩りが加わった。「きらり輝く、おおまち」と題した作品は、同市出身のお笑い芸人で信濃大町観光大使の鉄拳さんと、後輩に当たる大町中学校美術部が協力して仕上げた共作だ。
8月末まで、市街地19店舗で建設当時の様子の写真も展示中。ダム訪問の前後に、鑑賞と街歩きを楽しんでみては。
ダム訪問に合わせ街歩きを
大町市出身でお笑い芸人の鉄拳さんはパラパラ漫画の制作でも知られる。シャッターアート企画では2作品を手がけ、6月下旬の数日間に現地で描いた。
JR信濃大町駅前の作品は、黒部ダムの観光放水とそこにかかる虹、遊覧船、映画「黒部の太陽」をイメージした太陽などを描き、市キャラクター「おおまぴょん」、同ダムマスコットキャラの「くろにょん」と、自身も登場する。同ダムは遠足などで訪れ、ダム湖で流木回収のアルバイト経験もあるといい、慣れ親しんだ存在を題材にした楽しさが伝わる作品だ。
大町中学校美術部の部員15人と仕上げた作品には、北アルプスの山並みやライチョウ、民話の題材も登場する。サイズは縦2・4メートル、横4メートルほど。「手元だけを見ているパラパラ漫画と違い、全体像が分かりにくく、めちゃくちゃ難しい」と初挑戦の感想を語る鉄拳さん。「作品を写真に撮って拡散してほしい。見た人はぜひ黒部ダムに遊びに行って」とPRした。
生徒はアクリル絵の具での着色を担当した。大久保みのりさん(3年)は「大町の魅力にあふれた明るい感じの絵がすてき。すごい人とのコラボで、気持ちを込めて塗った」。
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公募作家として同市に1カ月余り滞在し、3作品を仕上げたのは画家、俳人の園田源二郎さん(41、滋賀県)。何度もダムを訪れたり地元住民らの話を聞いたりして、表現を煮詰めた。ベニヤ板にクレヨンで描き、途中で上から描き直す過程も経て完成した。
「形にとらわれずに本質を見よう」と、ダムの組成物の石を年輪のように描き、歳月の流れを感じさせる作品や、乗り物とトンネルをテーマに交差する時空や人生を描き出した作品も。ダム建設前には農耕馬が活躍して道を開き、大町で開かれたと聞いた馬を貸し借りする「馬市」に着想し、獣たちが進む様子を描く「みちをひらく」も見応えがある。
園田さんは「地元の人の協力で作品ができた。自分なりの解釈で自由に見てもらえたらうれしい」と話す。
詳細は「くろよん60」特設サイトから。