夏休み気軽に利用を 広がる子ども食堂

夏休み到来!子どもにはうれしい休みだが、普段給食のお世話になっている母親にとって、昼ご飯の準備はかなりの負担で、頭の痛い問題だ。物価高騰の昨今、経済的な厳しさから、子どもの昼食を十分に用意できない、深刻な家庭もあるだろう。
そんな時こそ、誰もが気軽に利用できる「子ども食堂」の力を借りたい。中信でもさまざまな思いを持った各地の有志が、週末などに食堂を運営。大きな広がりを見せつつある。
「地域の居場所」でもある子ども食堂。1カ月近い長い夏休み、近くの食堂に足を運んでみてはいかがだろう。新しく立ち上がった食堂のうち、松本市の「ヒッポポ食堂」と塩尻市の「一汁一菜えんしょく」を取材した。

夏休みの子どもに「居場所」を

22日、松本市の神林公民館で初開催された「ヒッポポ食堂」には、9家族42人が参加した。万華鏡作りの工作や、屋外でのボールすくいやかき氷配布といった夏祭り風の趣向に、子どもたちの歓声が響いた。昼食はカレーと春雨サラダ、トウモロコシとスイカ。子どもたちは「家のカレーよりおいしい」とお代わりし、おなかいっぱい食べる姿が見られた。
食堂を立ち上げたのは、18歳と5歳の子の母、小山深雪さん(46、神林)。母子家庭で育ち、幼少期に寂しい思いをした。「共働き社会の現代は、親が子にゆっくり接する時間がなく、近所付き合いも減り孤立する家庭が多いのでは。子どもたちの居場所をつくりたいと思った」
2年前から構想を温め、自身の食堂のテーマを「楽しく過ごす場」とした。松本市などの助成金を受け、おもちゃも新規購入。毎回変わる工作や学習支援、おなかいっぱい食べられる昼食…。NPOホットライン信州を通じて、企業から提供を受けた食材の提供も、活動に盛り込む。
小山さんに共感し、ママ友と中高生の子どもら15人がボランティア参加。そろいのTシャツで連帯感も育む。初回は農家7軒から段ボール10箱もの夏野菜が届けられるなど、地域の食堂として期待が集まる。
次回は8月19日、同公民館。午前10時~午後1時。大人300円の協力金。

塩尻市では29日から、ユニークな食堂がスタートする。その名も「一汁一菜えんしょく」。米と野菜は地元からの寄付、みそはみそ店から安く提供を受け、おかずには外来種のブルーギルを諏訪湖周辺で釣ってきて、調理し振る舞う予定だ。
広丘吉田で自然栽培の米を作る中村小太郎さん(本紙で「駆け出し百姓の自然農奮闘記」連載中)が米を寄付した学校の教員から、この地域にも十分に食べられない子どもがいると聞き、衝撃を受けた。昨冬から市内パン店の廃棄パンを配布する「きのうのパン屋さん」を、市内4カ所で週4日実施。利用するリピーターも増え、「毎週定期的に必ずやる重要性を感じた」。
もっと手厚い支援をと、今年2月、NPO法人化し活動を強化。「一汁一菜|」は夏休み中の土日、午前11時から、市民交流センター「えんぱーく」で。大人500円の協力金。支援を受ける側の心情にも配慮し、子どもは寄付してもしなくても分からないよう、とりあえず手を入れる箱「げんこつBOX」を用意した。

県内156の子ども食堂への食材提供などを行う「NPOホットライン信州・信州こども食堂ネットワーク」の青木正照専務理事は、こう指摘する。「夏休み明けは年間通して一番子どもの自殺が多い時期。子どもの居場所として悩みに向き合い、話を聞いて支えになる食堂が、自殺を防ぐ一助にもなるのでは」

【子ども食堂情報】NPOホットライン信州、県(信州こどもカフェ詳細情報)、松本市(市子どもの居場所づくり推進事業)などの各サイトに日時や内容など詳細。食材配布を行う食堂も多い。
ホットライン信州では、食堂に足を運べない困窮世帯などへの食材宅配も実施。各種電話相談にも応じる。TEL0120・914・994