
座ると、お尻の下からオルゴールが響き出すー。そんな「オルゴールの音体感チェア」が完成間近だ。楽器製造のフジゲン(松本市平田東3)が、より身近にオルゴールを楽しんでもらいたいと、椅子との組み合わせを考案。木工家具作家の協力で、試作品ができた。県内でのお披露目として8月9~11日、松本市内で開かれる同社の展示会で体感できる。
構想は3年前にさかのぼる。コロナ禍で心身の不調を訴える人が増えていた。同社営業・業務部の胡桃澤紀彦さん(50)は、「オルゴールで癒やしたい。生活空間に浸透させたい」と、椅子に付けることを思い付いた。
同市梓川梓で家具製造を手がける「パントキ」の小口明宏さん(48)にアイデアを持ち込んだ。「突拍子もないけど面白い」と小口さん。「丸く、かわいく」という製品イメージも一致した。
パントキの製品の一つを改造し、分厚い座面の下に、本格的なディスクオルゴールを装着。老若男女の誰でも座ると動くようにセンサーを仕込んだ。
記者も座ると鳴り出した。お尻への振動はわずかで気にならないが、座面に手のひらを置くとしっかり伝わってくる。肘掛けがないのは、これを感じてもらうことも理由だという。音を聞き、振動を感じて、癒やされる。
それにしても妙な感じではある。2月の東京の展示会では、試した人の顔が自然とほころび、周りと会話が生まれたという。笑いを生み、人と人をつなぐことも、オルゴールチェアの特長だ。
医療にも生かそうと今月末、重い障害のある人が利用する東京都立北療育医療センターに、試作品を置く。
製品化は来年以降。「オルゴールは芸術鑑賞のイメージがある。他の物と組み合わせて響きの魅力を広め、後世に残していきたい」と胡桃澤さんは話す。
体感は9~11日、同市大手2の「ながぎんコミュニティープラザ」で開かれる「フジゲン楽器展」で。同社安曇野第1TEL0263・81・1381