信学会信州予備学校(松本市深志2)で世界史の講師を務める一方、慶応大文学部通信教育課程で学ぶ黒栁和香(わか)さん(44、同市蟻ケ崎)。長男(11)と次男(8)の子育てや家事など、多忙な中でも「学びの炎」を燃やし続けています。
★高校の授業がきっかけで先生に
歴史好きになるきっかけは、小学生の時に見たNHK大河ドラマ「武田信玄」と、祖母からもらった「学習漫画日本の伝記」シリーズ(集英社)。「忠臣蔵」や「大岡越前」などのテレビ時代劇を見る機会も多く、言い回しなどが難しいながらも心引かれたといいます。
松本深志高校に進学すると、歴史研究家でもある青木隆幸教諭の日本史の授業に魅せられ、歴史の先生を志すように。学習院大文学部史学科で日本古代史を学び、卒業後は信学会に入社しました。
当初は中学生の日本史を担当しますが、「もっと教えられる分野を広げたい」と世界史の勉強も重ね、大学受験生の世界史の授業も受け持つように。職場で夫と出会い結婚、退職して非常勤になります。
出産して数年は育児に専念し、次男が1歳くらいの頃に復帰。週1回から授業を受け持ち、キャリアをつないできました。現在は週8コマ(1コマ50分)の授業を、午前から午後にかけて担当しています。
校長の田中祐介さん(52)は「いつも若々しくて勉強熱心。論述の添削指導もとても丁寧に取り組んでくれ、予備校にとって大切な人材です」。黒栁さんは「家庭を考慮して融通の利く働き方をさせてもらい、ありがたいです」。
慶応大通信でさらに力付け
★心血注ぐ卒論
コロナ禍の中で「何か手応えのある目標に挑戦したい」と、慶応大文学部通信教育課程第2類(史学)に2020年入学します。難関大を目指す生徒たちが、2次試験で問われる高度な論述を指導できる力を付けておきたい、という思いもありました。
始めるにあたり、「費用も時間の面でも、家族には一切負担をかけない」と宣言。仕事帰りに図書館で勉強したり、家での隙間時間や子どもたちの就寝後に課題に取り組んだり。地方在住者は現地で行うスクーリングが負担ですが、感染対策で全てオンラインになり出かけずにすみました。
同課程の課題は質量ともにハイレベルで、卒業するのは非常に難しいといわれます。しかし、持ち前の負けん気で必要な単位を3年間で取得。後は卒業論文を残すのみです。
テーマは、「オスマン帝国におけるスペイン系ユダヤ教徒の服飾文化」です。「史料を求めて松本平の図書館を回ると、意外な文献があったりします。完成したら卒論ロスになりそうですが、また次の目標を見つけたいです」
好きなことを学ぶ姿見せる
★余暇は博物館へ
休日に子どもたちと出かける先も博物館が多いと言います。縄文時代の土偶や土器がたくさんある松本市立考古博物館(中山)や塩尻市立平出博物館(宗賀)、趣味のドライブを兼ねて野尻湖ナウマンゾウ博物館(信濃町)や千曲市さらしなの里歴史資料館などへ。
「子どもも歴史を好きになってくれればうれしいですが、親の思うようにはいきません。大好きな分野を学び続ける姿を見せることで、知らなかったことがつながり、世界が広がっていく豊かさをいつか知ってくれればと願っています」