大町の下仲町商店街 にぎわい再び 諦めず

ただただ商店街に来てほしい─。その一心で、大町市中心市街地に人が集まる仕掛けを続ける人がいる。カフェや雑貨店、レンタルスペースがある下仲町商店街の複合店舗「ホッと一息…森の休息」のオーナー栗林佐千子さん(同市大町)だ。
市街地に生まれ育ち、子どもの頃の活況を知るからこそ、商店街を「何とかしたい」。昨秋からマルシェや演奏会、ワークショップなどを企画、多彩な切り口で人を呼び込む。「商店街ビタミンプロジェクト」と銘打ち、近接の空き店舗も借りて展開。今夏は頻度を高める計画だ。
「現状を諦めず、とにかくやってみる」。その原動力に迫った。

自分の居場所 大町に恩返しを

複合店舗「ホッと一息…森の休息」は、日替わり出店者によるシェアキッチン形態のカフェと、テナントで雑貨店が入り、レンタルスペースもある。店内では月替わりの展覧会も開き、中で1日過ごせそうなほどの施設の充実ぶりだ。
栗林佐千子さんが、別々の場所で営んでいたリラクセーションサロンと雑貨店を同じ店内に置きたいと、空き店舗だった現在の場所で営業を始めたのが2017年。栗林さんは昨年2月、施術で酷使した指が不調になり、サロンは昨夏から長期休業中。現在はオーナー業に専念している。
人口減少や大型店との競合、ネット通販の普及、後継者不足などで閉まったままのシャッターが目立つ商店街。栗林さんは、不定期でマルシェを開くなど商店街に足を運ぶ理由をつくり、街の回遊性を高めたいと動いていた。
商店街全体の活性化を強く意識し、取り組みを一層推し進める契機になったのが、昨年秋、市の主催で、市街地の空き店舗を期日限定で活用する「シャッターオープンプロジェクト」だ。栗林さんは開催日に合わせて独自に「森の休息」隣の空き店舗を借り、ライブや古着市、豆に特化したマルシェなどを日替わりで開催。相乗効果もあり、予想以上の人出があった。「何かをやれば人は来ると手応えを得た。認知度を上げるため、継続が大事」と感じた。
その後も、カフェの一角で写真教室やレコード鑑賞会、子ども向け絵本読み聞かせマルシェなど、多彩な催しを継続。空き店舗内をキャンプ場に見立て、商品販売やライブなどをした「商店街でアウトドア」は、話題性も大きかった。拠点である商店街を盛り上げる一連の活動を「商店街ビタミンプロジェクト」と名付けた。

「学生時代の真面目な自分が嫌だった。好きなことが大町にはなかった」と栗林さん。高校卒業後は迷わず上京。20年後、親の介護で大町に戻った。
東京でしていたリラクセーションケアの仕事を大町でも続けると決意し、開業。「私が東京にいる間に両親を支えてくれたのも、今の仕事が軌道に乗ったのも、地域の皆さんのおかげ」と感謝する。「故郷を離れ年を重ね、山や水の美しさにもやっと気付いた。あんなに嫌いだった大町が、今は自分の居場所。恩返しをしたい」
幼少時から人の面倒を見たり世話を焼いたりするのが好きで、「にぎわいや雑踏も大好き」。帰郷して目にした商店街の現状。黙って見ていられない─。そんな性分も栗林さんを突き動かす。

今夏、栗林さんは2軒隣の空き店舗を9月中旬まで借り切る。広さを気にせず催しを企画し、毎日シャッターが開けば街に活気が出る。一般の出店(出展)者も募っている。1日4千円(土、日曜、祝日5千円)。
栗林さんに共感した近くの店主が日時を合わせて催しを企画、“はしご”を楽しめる動きや新しい人の動きも出始めた。「人がいて、にぎわってこそ商店街。諦めずに頑張りますよ!」。その言葉に迷いはない。

【「商店街ビタミンプロジェクト」直近のイベント】
11日午前11時~午後4時、大町市出身のシンガー・ソングライターのmar.(マル)さんのトークライブとマルシェ(入場料500円)。12日午前10時~午後4時、古道具・雑貨などの「アンティークマーケット」。両日とも同市大町の旧ショーゲツ。詳細は「森の休息」のインスタグラム=こちら=か電話(0261・23・7145)で。