木曽の魅力発信 プロジェクト始動

美しい川の流れ、山々の豊かな自然、伝統的発酵食文化を受け継ぐみそ蔵や酒蔵─。木曽の魅力をSNSやイベントを通して発信し、日本中に木曽の風を吹かせようと、地域のPR事業「風よ吹け」プロジェクトが動き出している。
1日、都内の県情報発信拠点「銀座NAGANO」で、木曽の食文化を伝えるイベントが開かれた。都内の飲食店経営者や料理研究家、インフルエンサーら約50人が参加し、木曽の魅力を体感した。
木曽広域連合主催。発起人は、東京の経営コンサルティング会社に勤め、冬は中善酒造店(木曽町福島)で酒造りを手伝う町田さくらさん(23)。一杯の酒を口にして、木曽の魅力を知った。「この価値を100年後もずっと残したい」と奮闘している。

東京で食文化を伝えるイベント

東京都のペアリング(さまざまなものの組み合わせ)専門店の協力で「食材」×「日本酒」×「漆器」を使い、「木曽の四季」をイメージしたコース料理を堪能。料理は、みそや乳製品などの発酵食品、野菜、ジビエなど、木曽の「食材」をふんだんに使った野菜のソテーや熊肉のゼリー寄せなど。合わせて木曽ヒノキを削ったり燃やして煙をなじませたりと工夫して香りを出した4蔵の日本酒を、一緒に味わった。
湯川酒造店(木祖村薮原)、中善酒造店(木曽町福島)、杉の森酒造(塩尻市奈良井)、七笑酒造(木曽町福島)の木曽地域の酒蔵4蔵の杜氏(とうじ)が参加し、司会者や参加者の質問に答えた。蔵の特徴、挑戦してみたい酒造りなどについて、思いを率直に語っていた。
都内で日本酒BARを営む山口梨理子さんは「聞いたことはあったが行ったことのない場所。生産者の生の声を聞けて興味を持てた。漆器もかっこよく活用できたら」。日本酒好きのインフルエンサー藤澤彩花さん(24)は木曽の酒を初めて口にしたといい、「酒造りのこだわりが直接聞けて良かった。酒蔵ごとの甘みやうまみ、清涼感などの違いがよく分かった」など好評だった。

写真投稿などで木曽の奥深さも

発起人の町田さくらさんは埼玉県出身。飲食店経営をしていた頃に日本酒に興味を持ち、日本酒業界の源流を見たいと蔵人への転身を決意。2021年10月から、冬季は中善酒造店で酒造りを手伝っている。
酒造りに携わり始めてすぐの頃、木曽の酒を数種類テイスティングした際、「言葉にできないほどおいしいと感じた」と町田さん。「おいしさの秘密はなんだろう?」と考える中で、良質な水を生み出す豊かな森林が関係していること、木曽には古い歴史があり、漆器などの工芸品をはじめとした奥深い木曽地域の文化があることに気づいた。知られていないとすれば「もったいない」と感じた。
「木曽には価値あるコンテンツがたくさんある。一人でも多くの人に知ってもらいたい」と動き始め、クリエーターや地域おこし協力隊、自治体、生産者など、多くの人の協力を得て実現した今回のイベント。県の地域発元気づくり支援金も受けた。=インスタグラム=でも発酵文化や木をテーマにしたストーリー性のある写真や投稿で、木曽の奥深さを伝えている。
参加した湯川酒造店の湯川慎一さんは「町田さんの必死さに応えたかった。(木曽の魅力を外に出て伝えるイベントは)ありそうでなかった取り組み。これを入り口にもっと発展していけば」。町田さんは「まずは知ってもらい、最終的には木曽に来てもらう、コンテンツを買ってもらう─などにつなげたい。活動は継続的に続けたい」と意気込んでいる。