【醸し人】#5 岩波酒造 杜氏・佐田直久さん

蔵の味引き継ぎつつ発展

昨年創業150周年を迎えた岩波酒造(松本市里山辺)。杜氏(とうじ)の佐田直久さん(57)を中心に社員一丸となり、越後杜氏の伝統の味を引き継ぎながら、蔵の特徴をさらに発展。「うまみとキレの調和」を追求する。
創業当初から、飲み飽きない、すっきりとした味わいと評価されてきた酒質は、2012年に佐田さんが杜氏になってからも、蔵の伝統として引き継ぐ。
6月、メインブランド「岩波」のラベルをリニューアル。3点貼りのラベルを1点にし、写真も鮮明にして、すっきりとしたイメージをより強調した。「時代を敏感に感じ、順応するため、少人数の強みを生かし、アイデアを出し合っている」という。
昨年3月に販売を開始した「岩波美禄(びろく)純米大吟醸」は、うまみを感じさせ、ほどよい香りでどんな料理にも合うように仕上げている。「最高峰の酒でも価格は抑えめ。ぜひ味わってほしい」と切望する。
新潟県出身。サラリーマン時代に転勤で松本へ来て、自然豊かな環境に魅せられた。友人もでき、日本酒を酌み交わす楽しさも感じた。松本での暮らしになじむと、「心から打ち込める仕事がしたい」と思うようになった。95年、蔵人を育成するために社員募集をしていた岩波酒造に入社。今秋、造り手になって29年目を迎える。
「やりたい仕事をやれている」と、充実した日々に感謝する一方、残念なのは、酒に健康を損なうイメージがあること。「『百薬の長』などの言葉もある。適量は血行を良くし、人間関係も円滑にしてくれる」と力を込める。
1日の終わりに酒を飲む至福のひとときを提供するため、松本で得た天職にまい進する。

【沿革】
いわなみしゅぞう
 1872(明治5)年創業。創業当初から長らく、越後杜氏の手によって酒造りが行われた、その技術を2012年に自社社員が引き継いだ。メインブランド「岩波」各種の他、華やかな味わいの「鏡花水月」、県の甘酒鑑評会で2度最優秀賞を受賞した「造り酒屋の甘酒」などがある。

【佐田さんおすすめこの1本】
岩波美禄純米大吟醸(720ミリリットル2090円、1・8リットル4180円)

【相性のいい料理】
どんな料理とも好相性。好きな料理と合わせて

【連絡先】
岩波酒造TEL0263・25・1300