
ネパール出身の女性 美術館隣接の公園で自国の味提供
ネパール出身で松川村に暮らし21年になるザンムー・シェルパさん(50)が今月、同村の安曇野ちひろ公園南側駐車場付近で、ネパールの飲み物や軽食などの店「ヒマラヤンキッチン」を始めた。心の故郷として同村を愛した絵本画家いわさきちひろの一枚の絵に救われた経験から、この場での営業を熱望。「公園での滞在がもっと楽しくなれば」と張り切る。
シェルパさんは、エベレストの麓ソルクンブ郡の生まれ。現地で日本人の夫と出会い、22歳で来日。県内では大町市で暮らした後に同村に転居した。3人の娘を育てていたが、「それぞれの個性を自由に伸ばし、語学も身に付けてほしい」と願い、17年前、娘たちを同国の首都カトマンズの親戚に預けた。シェルパさんは教育費などを稼ぐため日本で働き、年に1、2カ月は一緒に過ごすなどして愛情を注いだ。現在、3人の娘は再び日本で暮らしている。
10年ほど前のこと。旅先の宿に飾られた一枚の絵を目にすると、シェルパさんの涙腺が崩壊した。カーネーションを手に母親に抱きつく子どもを描いた、いわさきちひろの「母の日」だ。5歳で親元を離れたシェルパさんの三女、舞さん(22)は頻繁に抱っこをせがみ、描かれた幼子と重なった。「絵を見て泣いたのは初めて。ちひろさんも一時期は子どもと離れて暮らしたと聞いた。寂しさを感じていた頃に絵と出合い、とても勇気づけられた」と振り返る。
自分を支えたちひろの作品、安曇野ちひろ美術館や隣接する同公園の魅力を大勢に伝えたい。見守ってくれる地域住民へ感謝を込め、故郷の味を楽しんでもらいたい|と考え、村から公園内の店舗を借りて開店した。
店では手作りのラッシーやチャイ、キーマカレー入り「スパイシーサンド」のほか、村産の梅ジュースも扱う。お盆中は観光客も多く、「ナマステ。良い旅を」と合掌し、明るく見送った。
午前11時~午後4時ごろ。不定休で、29~31日は休み。