【なないろキッズ】 #87 「当たり前」を見直す

2023年7月16日の信濃毎日新聞に、長野市の中学校で着替えが男女同室で行われているという記事が掲載されました。そして8月10日には続報として、長野市内の中学校24校中10校で体育時の着替えが男女同室で行われていること、長野市教育委員会が着替えを男女別室にするように通達を出したこと等が報じられていました。
この記事を読んだほとんどの人が、「令和の現代の中学校の話ですか?」と唖(あ)然としたと思います。メディアで報じられて話題になったことがきっかけとなり、たった1カ月で、別室にするようにという通達が出たということでしょうか。
中学生が男女同室で着替えをするなんて、ほぼ全員の生徒が不快に感じていたことでしょう。生徒や保護者の中には、別室で着替えるようにしたいと声をあげていた人がこの数十年間の中に何人も何人もいたはずです。にもかかわらず、メディアで報じられて表沙汰になるまで、「空き教室がない」などといった理由にもならない理由で、時代に合わせて体制を整えることもなく、何十年も中学校という閉鎖環境の中でのローカルルールがまかり通っていたことに、学校という現場の特殊性が現れていると感じました。
発達障害のお子さんのための合理的配慮を学校に求めた際に、学校側の事情や1人だけ特別扱いできないとのことで対応が難しいと言われることがあります。学校の現場が、着替え時の男女の同室のようにほぼ全員の生徒が不快に感じるようなことでさえ、これまでの慣習を変えることなく、生徒の不快感、理不尽感を蔑(ないがし)ろにした人権侵害が当たり前に存在している場なのであれば、少数派の人が感じる不快や不安に対して「特別扱いできない」といわれるのも無理はないのかもしれません。
また少数派の人にだけ「合理的配慮」がなされて、多数派の生徒の人権侵害には対応がなされなければ「特別扱いずるい」という声が出て当然でしょう。
生徒一人一人の安心・安全が守られる学校現場にするために、「学校の当たり前」を見直す時期に来ているのではないかと思います。