
多くの賛同者 今後の活動期待
1人の女性が声を上げたことをきっかけに、松本市今井地区の子ども食堂の動きが始まった。多くの人を巻き込んで地域ぐるみの運動となり、7月29日から8月1日にかけ、今井公民館を主会場に3回実施。延べ130人の今井小学校児童が、友達と一緒にさまざまな体験をし、昼食を味わった。
「こんなに大がかりになるとは思わなかった」と驚くのは、櫻井くみ子さん(46)。自身の子は既に同校を卒業しているが「母親の立場として、長期休み中の子どもが、友達といろんな体験をしたり食事をしたりする場所はありがたい」。
子ども食堂実現までの経緯をたどった。
休みの子のため自分たちも何か
5月中旬、松本市の今井小学校の運営や学校支援などに携わる人たちがつくる「今井っ子なかよし会」の会議があった。席上、「コロナ禍以降、なかなか子どもたちに関わることができない」という声が出た。他地域の話題も上り、学校の長期休み中、毎日のように子ども向けの催しが計画されている地域があることも伝えられた。
読み聞かせの会代表として会議に出席していた櫻井くみ子さんは、後日、自身が通う蕎麦(そば)道場「大瀬庵」主宰の大瀬渡さんに相談。「夏休み中、子どもが1人で留守番したりゲームざんまいになったりするだけでは親も不安。自分たちでせめて1日だけでも、何かしてあげられないか」と持ちかけた。
大瀬さんも賛同して2人で今井公民館に出向き、地区生活支援員の胡桃亜矢子さんらに相談した。その結果、地区の福祉協議会、民生委員・児童委員協議会、食生活改善推進員会、子ども会育成会など、子どもに関わる団体にも呼びかけ、6月下旬に会議を開くことになった。
地域に呼びかけ支援の輪広がる
当初は「なぜ呼び出されたのか分からない」と戸惑っていた各団体からの参加者も、話を聞くとすぐに賛同。それぞれの団体が昼食作りや福祉体験、工作などを担当して、子ども食堂を中心とした行事を3日間開催することが決まった。さらに地域に呼びかけると、「食材に」と米や野菜や果物、牛肉などを提供する人や、子ども向け科学実験を担う人など、さまざまな支援の輪が広がった。
初日の7月29日は、今井児童センターを利用する61人の児童を含め、約80人が今井公民館に集まった。午前中は、高齢者や目が不自由な人の疑似体験。おもり入りのベストや周りが見えづらくなるゴーグルを着け、歩いたり新聞を見たりした。アイマスクをして階段を歩いた児童は「怖かったけれど、友達が手伝ってくれたからうまくできた」と話し、困っている人への声かけや手助けなどの大切さを学んでいた。
昼食はカレーライス。あっという間に平らげ、お代わりに並ぶ子の姿もあった。
「開催まで時間がない中、多くの人の協力で実現できた。ここから少しずつ輪が広がり、他の団体や学生らとも連携を取っていくことができれば」と胡桃さん。櫻井さんも「寄り合って助け合う習慣が残っている地域だからこそ、多くの人が関わってくれた気がする。今後、輪が広がれば日数や体験の内容も増えるし、子育てをしやすくなるのでは」と、さらなる広がりに期待も込めていた。