
大学の写真学科進学を目指す予備校生、黒岩航平さん(19、松本市島内)が9月9~11日、マツモトアートセンター(同市大手1)のギャラリーで写真展「ココロの焦点」を開く。「作品を見た人と話ができたら」と、受験の真っ最中に決行。その裏には、「この1年、撮りたいものが分からなくなった」という悩みがあった。
展示作品は、最近撮影したものを中心に18点。街を行き交う人々、自由な想像を促す抽象的な写真もある。
撮り始めたのは2020年、高2の春。数カ月前から不登校になっていた黒岩さんを、中学時代の友人が誘い出してくれた。
それから2年間、電車や街、特に、雨や雪の中を行き来する人々や、夜の街の様子に美しさを感じ撮影。人との交流や社会とのつながりも徐々に回復し、「進学して、もっと写真を学びたい」との思いも芽生えた。
ところが昨年夏、信毎メディアガーデンで開かれた報道写真家、樋口健二さんの写真展を見て、撮影対象がぼやけ始めた。「社会の闇を浮き彫りにする樋口さんの作品が衝撃的で。何を撮るべきか考えるようになった」
そこからは思索と迷いの日々。表現、真実、写真、自分とは何か…。テーマを絞らずあらゆるものを撮り、焦点(=撮りたいもの)が定まらないまま今年の志望校の受験を迎えた。
「写真で何をしたいのか、何を撮りたいのか絞れない。入試のエントリーシートが書けない」と頭を抱える黒岩さんに、昨夏から通い始めた市内の小論文塾の先生、竹内忍さんが助言した。「作品展を開いて、今の自分を表に出してみたら」
黒岩さんは「来場者と話す中で、自分自身のことや撮りたいものが見えてくるかもしれない」と、期待と不安の中で準備を進める。
午後1~7時、無料。